アメリア会員インタビュー


ヘレンハルメ美穂さん

第64回
語学が好きで好奇心旺盛!縁あって移住したスウェーデンから翻訳によって文化の架け橋に
  ヘレンハルメ美穂さん
Miho Hellen-Halme


語学が好きで好奇心旺盛! 専攻をフランス文学に急遽変更

坂田:今回のゲスト、ヘレンハルメ美穂さんは現在スウェーデン在住です。2008年よりスウェーデン語で書かれた作品を数多く翻訳されていますが、その前はフランス文学を学ぶためにフランス留学をしていた時期もあったそうです。語学が好きで、日本に英語以外の情報も積極的に紹介したいとおっしゃるヘレンハルメさんに、たっぷりとお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

ヘレンハルメ:はい、よろしくお願いします。

坂田:英語、フランス語、スウェーデン語と、さまざまな言語との出会いがあり、習得していらっしゃったようですが、最初の出会いはどの言語で、どのようなきっかけだったのでしょうか?

ヘレンハルメ:最初は英語です。父の転勤で小学校入学の前後にアメリカに1年あまり滞在しました。これが外国語との最初の出会いです。そのとき覚えた英語は、その後ほとんど忘れてしまいましたが、幼いなりに「世界には日本語と違う言語がある」ことを体感したのは大きかったと思います。これが、あらゆる外国語への関心のベースになっているような気がします。自分にまったく理解できない言語を話している周囲の人々を見て、「この人たちは、耳が違うのだろうか?(日本語に変換されるフィルターみたいなものが耳の中に入ってる?)」というようなことを考えたのを覚えています。

坂田:耳にフィルターが入っているなんて、子どもの発想はユニークですね。その後、英語は忘れてしまったとのことですが、子どもの頃の体験は案外体に染みついていたりするのでは?

ヘレンハルメ:中学生になって英語を学びはじめたとき、習っていない構文を無意識のうちに使っている、ということがありましたから、脳の片隅には英語が残っていたようです。得意科目ではあり、将来は語学を活かした仕事をしたいと漠然と思っていましたが、具体的に翻訳という職業は考えていませんでした。ものを書くのが好きだったので、作家やジャーナリストを夢見たことはありましたが……。

坂田:ものを書くのが好きだったというと?

ヘレンハルメ:日記は子どもの頃からかなり長いあいだ、熱心に書いていました。今でもたまに書いています。日記帳だったりパソコン上だったりさまざまですが。小さい頃は物語も書いていました。小説を翻訳するようになって、幼い頃のこういう経験が多少なりとも役に立っていると思います。頭の中にあるぼんやりとした思いや考えを言葉で言い表すのには、練習と慣れが必要だと思いますので。とくにいまは海外に住んでいるので、日本語の練習はとても大切だと感じています。

坂田:そうですね。母国語であっても練習や慣れは必要ですよね。英語は得意科目だったとのことですが、ではフランス語との出会いは?

ヘレンハルメ:大学生のときです。国際経済やビジネスを専攻しようと思っていたのですが、一般教養で学んだ言語学や文学理論にすっかり魅了されてしまいました。文学の授業を担当していたのがフランス人の先生で、「私の元でフランス文学を専攻する人には、フランス語で授業を受け、フランス語で卒論を書いてもらう」というのを聞いて、「それ、挑戦してみたい!」と。語学好きの血が騒いだんですね(笑)。当時、フランス語を学んだことすらなかったのに、半ば衝動的に専攻を変えてしまいました。
 改めて、フランス語にのめりこんだ理由を自分なりに分析してみると、主に2つあると思います。1つは、フランス人の気質が私にとっての異文化だったから。言いたいことをズバズバ言い、感情を表に出し、口論かと思うぐらい議論し、でも後には引きずらない---徹底した個人主義---知れば知るほど、「もっと理解したい!」と思いました。もう1つは、当時、外国といえばアメリカをはじめとした英語圏、海外からの情報といえば英語にかぎられていた私にとっては、フランス語を通じて開けてきた新たな世界が新鮮でした。

坂田:それにしても、まったく学んだことのなかったフランス語に専攻を変えてしまうとは、大胆ですね(笑)! その後の勉強はかなり大変だったのでは?

ヘレンハルメ:途中からの専攻変更だったので、かなり遅れてのスタートでしたが、逆にそれが刺激になって必死で勉強したので、時間があってだらだら勉強するより良かったと思います。実際にフランス語での授業がスタートしてからは、年間通して集中講座を受けている感じで、かなり鍛えられました。