ニュージーランドで翻訳者としてご活躍の高木美和子さんにインタビュー! | 【Amelia】在宅でできる英語などの翻訳の求人・仕事探しはアメリア

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高木 美和子さん

高木 美和子さん

ニュージーランドで実務翻訳中

プロフィール

ニュージーランド在住、ニュージーランド翻訳者通訳者協会・正会員英日翻訳者。京都府立大学在学中の夏休みにニュージーランドで2週間の語学研修を経験して以来ニュージーランド好きに。大学卒業後は地元京都で就職。コールセンター勤務で忙しい日々を送るもニュージーランドへの想いが捨てきれず再びワーキングホリデービザでニュージーランドへ。その後、ニュージーランドの旅行業界で現地ガイド、インバウンドツアーオペレーター、オペレーションマネージャーを歴任。旅行業を離れた後、オークランド大学大学院で翻訳学を学び、ポストグラデュエイト・ディプロマ号を取得。卒業と同時に本社がニュージーランドにあるグローバル企業の翻訳会社(現在同社はAIテクノロジーサービス会社)に入社。翻訳プロジェクトコーディネーター2年、社内翻訳者3年半の勤務を経て、2025年10月からフリーランス翻訳者へ。会社員時代に培ったカスタマーサービススキルと言語スペシャリストスキルを活かして、これまでにさまざまな業界の企業の契約書、約款、規約の翻訳、ホテルチェーンやITサービスのグローバルブランドのマーケティング翻訳、医療機器の翻訳、ニュージーランド企業・機関の各種翻訳などの実務翻訳を経験。

グローバル企業の文書やウェブページを翻訳

加賀山:本日は、ニュージーランドのオークランド市で実務翻訳をしておられる、高木美和子(たかぎ みわこ)さんにお話をうかがいます。じつは私、ニュージーランドの南島をレンタカーで1週間ほどまわったことがありまして、トレッキングもして、すごく楽しかったです。

高木:そうなんですか。私もいまはオークランドにいますが、初めてニュージーランドに来たときには南島のクライストチャーチに到着して、半年間そこに住んでいました。ちょうど1月から3月は山歩きにもぴったりの季節ですね。

加賀山:南半球は夏ですね。ぜひまた行きたい国ですけど、なかなか……あ、仕事の話をしなければいけません(笑)。プロフィールでこれまでの実績を拝見しますと——

 ・観光スポット・博物館、グローバルチェーンのホテルのウェブサイトやパンフレットのマーケティング翻訳
 ・医療機器や機械工具のユーザーインターフェース、取扱説明書、ヘルプページ、企業ウェブサイト
 ・オーストラリアやニュージーランドの高校・大学の留学生プログラムのパンフレットやウェブサイト
 ・IT企業のニュースレター、ヘルプページ、パートナープログラムポータルのユーザーインターフェース
 ・企業紹介動画の字幕翻訳

などに加えて、いろいろな業界のリーガル翻訳もされています。これらのなかで最近多いのはどれでしょうか?

高木:いま多いのは、あるIT企業さんが販売されているソリューションや製品、サービスを記述したリーガル文書の翻訳で、相手方の名前が入っていませんから、おそらく雛形のようなものだろうと思います。相手企業さんとの契約に使ったり、一般的にオンラインで公開したりするものですね。形式としては、契約書、プライバシーポリシー、利用規約などがあります。
 IT企業ですので、サービスやソリューションの更新や機能の一部変更が頻繁に発生します。ですから最近は、一から訳すというより、既存の文書から変更になった箇所や、お客様が翻訳者に既存の翻訳の再確認を希望される箇所だけを、オンラインの翻訳プラットフォームで編集することが多くなっています。
 それ以外ですと、ある医療機器メーカーさんの既存の機器のユーザーインターフェイスやプライバシーポリシーの更新部分や、新たな機器や関連ソフトウェアの取扱説明書やヘルプページなどを翻訳しています。
 もともとは去年の9月まで翻訳テクノロジー会社で正社員として働いていたときに受けていたお仕事ですが、10月からはフリーランスとして引きつづき携わっています。
以上のふたつが多くて、そのあいだにときどきほかの案件が入る感じです。

加賀山:そのIT企業や医療機器の企業は、とくにニュージーランドとは関係ないのですか?

高木:その顧客企業がニュージーランドの会社というわけではないのですが、どちらもグローバル企業で、日本語だけでなく多言語への翻訳を頼まれているなかで、私は日本語翻訳を承っています。昨年9月まで勤務していた会社は、本社がニュージーランドにあるグローバル企業で、複数の言語の翻訳が必要なときには依頼しやすいんだと思います。
 ニュージーランドの企業や機関からのお仕事としては、定期的ではなく発生ベースになりますが、博物館が新たに作成した案内書、ニュージーランド国内のビジネス全体の海外市場へのプロモーション資料や動画の字幕、日本人留学生を増やそうとしているこちらの高校・大学のパンフレットやウェブサイトなどの翻訳をしています。

加賀山:それらはすべて英日の翻訳ですか? 日本語から英語もありますか?

高木:仕事のほぼ95パーセントは英日です。というのも、私はニュージーランド翻訳者通訳者協会の正会員でして、その協会が基本的には自分の母語に翻訳する翻訳者に仕事を依頼することを原則としているからです。ただし、英語が母語の翻訳者がいなかったり、緊急時に空いていなかったりすると、こちらにまわってきて、英訳をすることもあります。あと、まれにあるのが証明書の類いで、納税証明書や学歴証明書を日本語から英語に翻訳します。

ニュージーランド翻訳者通訳者協会とは?

加賀山:いまお話に出た、ニュージーランド翻訳者通訳者協会というのはどういう組織なのですか?

高木:英語ではNZSTI(New Zealand Society of Translators & Interpreters)ですが、ニュージーランドの政府関係者や企業の方々が翻訳者を探していて、どういう人に頼めばいいのだろうかというときに、ここのウェブサイトで検索すると登録者の名前が表示されます。
 厳密に言えば公的資格ではないので、登録しないとニュージーランドで翻訳ができないというわけではありませんが、実態として、ここに登録された人であれば自信を持ってお薦めできるということを政府関係機関が認めています。あとはフリーランスの翻訳者・通訳者がさらに技能を高めるためのプログラムを提供してくれたり、交流会を開催してくれたりします。翻訳者・通訳者としてのスキルや人脈を維持、発展させるための活動ですね。

加賀山:政府の団体なのですか?

高木:政府の団体ではありませんが、ニュージーランドは移民の国ですから、政府機関の関連サイトを見ると、「翻訳者や通訳者を見つけたいときにはNZSTIで」というような案内が書かれているところがあります。

加賀山:親切な政府ですね(笑)。そこに登録するには資格試験のようなものがあるのですか?

仕事中の机に、ニュージーランド翻訳者通訳者協会・正会員翻訳者の証書を置いています。証書は普段は机上ではなく机の近くの別の場所に飾っています。

高木:会員になる方法が3つあります。まず、NZSTIが認定している大学・大学院で所定の翻訳学を修めていること。私もオークランド大学大学院で、学士と修士のあいだにある翻訳学のPostgraduate diplomaを取得しました。修了するだけでなく、全コースの成績が平均B+以上で、翻訳の実務コースか論文の成績がA-以上であることも求められます。
 それから、ほかの大学や大学院で同様の成績を収めた場合には、必要書類をそろえて申請し、協会が認めれば会員になれます。
 あとは、実務経験でも認められる場合がありまして、最新の情報ですと、翻訳会社なり翻訳業界で最低5年間の実務経験があること、もしくはフリーランスとして定期的に翻訳の仕事を続けていること、となっています。その証拠を提出して、協会の審査に通ればいいわけです。
 以上3つのいずれかを満たし、かつ現在ニュージーランドに住んで働いているか、過去にニュージーランドで働いたことがあって、いまも強いつながりを持っていることが条件になります。

加賀山:なるほど。けっこう厳しい条件ですね。

高木:そう……かもしれません(笑)。

加賀山:申請して認定されるまでにどのくらいかかるのですか?

高木:私の場合には、年をまたぐややこしい時期に申請してしまったので、1カ月ほどかかりましたが、ふつうはそこまでかからないと思います。

加賀山:とはいえ、国がそういうことにかかわるというのはやはり親切ですよね。いろいろな仕事をされてきたなかで、とくに印象に残っているものはありますか? 楽しかったことでも、苦労したことでも。

高木:そうですね……フリーランスになるまえに社員として働いていた会社では、翻訳者に仕事を依頼したり、全体のスケジュールを管理したりする翻訳プロジェクトコーディネーターの仕事もしていました。お客様はグローバル企業が多くて、翻訳の依頼主は日本人ではないけれども、社内に日本支社や日本人のチームがあって、私たちが翻訳したものをお客様側の日本チーム内で変更するケースがありました。
 すると、日本語がわからない翻訳の依頼主の方が、なぜ変更されたのかがわからないので、私たちの翻訳が間違っていたのか、それともほかの理由で変わったのか、説明を求められるということがけっこうありました。先方の社内で話し合ってくれればすむ話なのかもしれませんが(笑)、コーディネーターとしては日本語を読めない依頼主に、英語から日本語への翻訳について英語で説明しなければならず、さらに相手がお客様であるという事情を考慮してどう説明するかということが苦労しましたね。
 たとえば、ウェブサーバーからユーザーのブラウザに送信される「クッキー」がありますよね。あれをカタカナで表記するか、Cookieと表記するか。私たちの会社が提出した翻訳ではアルファベットのままでしたが、それを見たお客様側の日本チームがすべてカタカナ表記に変更したんです。するとお客様側の翻訳の依頼主のほうから、こんなにおたくの翻訳には間違いがあったのかと言われまして、結局そのときには、両方の表記の検索結果を出して、ほぼ半々なので間違いではなく嗜好性の問題であることを説明し、今後はカタカナ表記を徹底すると伝えました。

加賀山:そういう社内コミュニケーションのサポートもしていたのですね(笑)。

高木:そこできちんと説明しておかないと、誤訳とされる可能性もありますので、難しい問題ですね。一方で、そういうお手伝いをしておくと、フリーランスになってからも当時の担当の方から何か依頼されることがありますので、ありがたいとも言えます。

加賀山:昔勤めておられた翻訳会社のほかに、別の会社からも仕事の依頼はありますか?

高木:去年の10月にフリーランスになったばかりで、あともう1社しか契約していません。いまはほとんど以前勤務していた会社からの依頼ですが、やはり仕事の波がありますから、ほかにも広げたいところです。
 それと、ニュージーランドには、個人や企業、団体などで翻訳者を探しているのにアクセス方法がわからないという需要があると感じています。これから自分でウェブサイトのようなものを作って、そこを開拓してみようと思っています。

加賀山:会社員からフリーランスになられたきっかけは何でしたか?

オークランドの市街地方面に向かう市バスがハーバーブリッジを渡るときに車窓から見える風景。個人的に好きな景色です。

高木:会社側の事情がありました。翻訳テクノロジー会社を前面に出していたのが、AIテクノロジーが中心になって、翻訳のほうは他言語も含めて社内翻訳者からフリーランスの契約へという流れになったんです。私はもともと将来的にはフリーランスになることを考えていましたので、いいきっかけかもしれないと思いました。社員からフリーランスになる人をサポートしてくれる雰囲気もありましたから、スムーズに移行できるだろうと。

加賀山:アメリアにはいつ入られたのですか?

高木:2018年です。オークランド大学大学院に入学する前でした。それ以前は旅行業で働いていたのですが、退職しまして、休憩しながら次に何をやりたいか考えました。以前から翻訳を本格的に勉強して将来の仕事にしたいと思っていたので、その準備期間中にアメリアに入会し、フェロー・アカデミーの通信講座の入門&初級講座を受講しました。いま契約している1社は、フリーランスになったときにアメリアを通して見つけました。

加賀山:アメリアが役に立ったのですね。トライアルを受けたのですか?

高木:その会社に関しては、オークランド大学の学歴と、NZSTIの正会員であること、あと実務経験があるという証明書類で採用していただきました。
 アメリア入会当時から、求人はいろいろ見ていましたが、そのころはまだ実力が足りないと思っていたので、もっぱら先輩方がどんなことをしているのだろうという情報収集に使っていました。

ワーキングホリデー、旅行業、大学院を経て翻訳の道へ

加賀山:経歴についてうかがいますが、日本の大学を卒業したあと、就職されたのですか?

高木:はい。新卒で地元京都のタクシー会社に就職しました。文化の橋渡しをするような職場を探していましたが、いわゆる就職氷河期でなかなか見つからず、広い意味での旅行業、観光業ということでタクシー会社を選びました。大学時代にアルバイトで接客業もしていましたので。
 当時としては最新の配車システムを使うコールセンターで2年半ほど働きました。取りきれないほど電話が入ってきて、たいへんなこともありましたが、学んだことも多く、速さと丁寧さのバランスをいかにうまくとってさばくかという部分が鍛えられました(笑)。お客様の第一声が罵声でも、よくよく話を聞いてみると、結局希望されているのは、いまいるところに1台配車してほしいということだったりして(笑)。
 そのあとの旅行業でも、翻訳の仕事でも、クレームを受けたときに「このお客様は最終的に何を求めているのか。そこに到達するには?」というふうに持っていくとうまくいく場合がありました。ぜんぜん関係がなさそうなタクシーのコールセンターでの経験が今も役に立っています。

加賀山:なるほど。他業種の経験も貴重ですね。ニュージーランドへはどういう理由で行かれたのですか?

高木:大学3年生のとき、大学生協で語学留学のパンフレットを見て、夏休みに2週間、初めてニュージーランドに行きました。当時まわりで誰も行っていなかった国にしたんです。実際に見てみると、のんびりした時間が流れているところと、景色がきれいなところが気に入りまして、そのときからいつか住んでみたいなとずっと思っていました。
 それで結局タクシー会社を辞めて、1年間のワーキングホリデーでニュージーランドに来ました。最初は語学学校にかよったり、旅行をしたりでしたが、当時は日本人旅行者向けのガイドの求人がわりとありまして、1年の滞在うちの後半はニュージーランド現地ガイドとして働いていました。そのまま就労ビザも取れたのですが、2011年にニュージーランドでも日本でも大地震があって……。

加賀山:ありましたね。東日本大震災の直前にクライストチャーチの被害が報道されました。

高木:それでニュージーランドのインバウンドが激減して、就労ビザも期限切れになりそうでしたが、幸い同じ業界の別会社に移ることができました。旅行業界で働いていたときは、まず現地ガイドの仕事を4年半ほどしました。その後、B to B(企業間取引)とB to C(企業・消費者間取引)の観光・教育・褒章旅行の手配の仕事もするようになって、最終的にはオペレーション・マネジャーになり、7年ぐらい働きました。

加賀山:その仕事がけっこう長かったのですね。

高木:そうですね。ただそのあいだも翻訳はしたいと思っていましたので、『通訳者・翻訳者になる本』という雑誌を買ったり、翻訳学校のホームページを見たりしていました。手配の仕事をしていたときにも、いくらか翻訳はしていたんです。ニュージーランド現地のハイキングツアー会社などはニュージーランド環境保護省と密接に結びついていますので、急にルート変更の通達が英語で届いたときなどに、日本語に翻訳をして日本の旅行会社に送ったり、ペースメーカーや投薬など健康上特別な配慮が必要な日本のお客様の状況を日英翻訳して、こちらのレストランやハイキングの会社に渡したり。

加賀山:仕事の一部で翻訳はされていたのですね。そのあとオークランド大学大学院に入って本格的に翻訳を学ぼうということに?

高木:はい。その卒業見込みのときに翻訳プロジェクトコーディネーターの求人があって、それが去年まで勤めた翻訳テクノロジー会社でした。できれば日本語ネイティブで、ニュージーランドに住んでいて、カスタマーサービスの経験があって……というそれまでの経験を活かせる求人でした。
 入社後、コーディネーターではありましたが、翻訳もしていました。そのうち社内翻訳者の募集があったので、私自身が手を上げて、翻訳を専業とする社内翻訳者になりました。その会社では合計5年7カ月働きました。

見つけるのが難しいAI翻訳の間違い

加賀山:プロフィールの趣味のところに旅行とあって、マチュピチュやイグアスの滝、エアーズロック(ウルル)、ペナンのジョージタウンなどを訪問されています。いつ行かれたのですか?

高木:コロナ禍が明けた後、2024年、2025年です。まだ翻訳会社に勤めていたころに休暇を利用して……ですね。

加賀山:これからはフリーランスとしてどんな仕事をされたいですか?

高木:いまお仕事をいただいている会社とは良好な関係を保ちつつ、フリーランスになったら、翻訳できる分野をもっと増やしたいと思っていました。以前から興味はあったけれど踏み出せていなかったのは、金融翻訳です。今年に入ってからフェロー・アカデミーで金融の中級応用講座を受講しています。
 翻訳コーディネーター時代には金融の案件も扱ったことがあって、緊急時には自分でも訳していました。AI翻訳がどんなに進化しても完全に取って代わるのは無理な分野で、人間の翻訳者の需要はある程度残ると思っていますので、もっと分野全体を理解して、金融経済の翻訳もできますと自信を持って言えるように挑戦したいです。
 あとは、このまえNZSTIでマーケティングのウェビナーがあって参加したんですが、ニュージーランドでは、日本のように翻訳会社を通さずに個人で仕事を受注することも多いようで、先ほど申し上げたように、個人のホームページ開設などで、翻訳を必要としている人や企業に届く方法を開拓したいです。ニュージーランドにいるから、ニュージーランドにくわしいからお願いしたいという方も、日本のお客様でもいらっしゃるかもしれません。そうした方に私の存在を知ってもらいたいですね。

加賀山:先ほどAIの話が出ましたが、プロフィールには、AI翻訳モデルの精度向上のために、出力結果に対する分析や改善点などを英語でフィードバックする業務にも携わったとあります。これはどういうお仕事ですか?

高木:去年まで勤務していた会社で、何パターンかあるAIモデルの出力に品質の順位をつけたり、それぞれの出力に関して、いいか悪いか、悪い場合には何が間違っているかといったフィードバックを提供していました。それをもとにモデルを改善していくのです。

加賀山:ああ、AIテクノロジーに移ったというのは、そういうことがメインの業務になったということですね。AIに関して何か気づいたことがありましたか?

高木:ありました。AIが間違えるときというのは、人間とは違います。人間は単語の綴りや原文の解釈を間違えますが、AI翻訳の場合、日本語だけを見ると正しいように思えるんです。ところが原文と突き合わせると、原文にまったくない要素が入っていることがある。なぜかというと、モデルをトレーニングするときに「AとB」の組み合わせが何度も出てくると、それをAIが学んでしまって、Aだけを見たときに、Bが書かれていないのにBを入れてしまうんですね。

加賀山:それはおもしろいですね。余計なものがくっついてしまうから、削らなければいけない。ほかに何かありますか?

高木:いま具体例は思いつきませんけど、AIはそれらしい文章を書いて、さも上手に意訳をしているように見えますが、よく原文を読むとそんなことは言っていない、ということがあります。ほかの翻訳者さんも体験されているのではないかと思いますが、自分で一から訳せば間違えないのに、AI翻訳を編集すると間違えそうになることがあります。昔の機械翻訳はもうちょっと直訳調でしたから、読めば間違いに気づきますが、いま生成AIで作った訳文だけを読むと本当に自然な文章なので、かえって修正点に気づきにくくなっています。

写真の中央の奥に見える山は、ニュージーランド最高峰のマウントクック。複数あるハイキングコースの中で初心者でも歩きやすいフッカーバレートラックの入口から撮影しました。

加賀山:最終的に出てくるものがきれいに整っているから、間違いに気づきにくいんですね。一から自分が訳すときより、むしろ手間暇がかかるかもしれません。

高木:一般的な単語のリストなどは正確に訳すので人手が省けますが、文章が長くなればなるほどAIは危ないです(笑)。

加賀山:なるほど。最後に、トレッキングが好きな人間にニュージーランドでいちばんお薦めの観光地はどこでしょう(笑)?

高木:山がお好きなら、マウント・クックがいいかもしれませんね。1泊するのとしないのとではぜんぜん違います。フッカー・バレー・トラックというコースも楽しめますよ。

■ マウント・クック、以前行ったときには通過しただけでしたが、いつかゆっくり行ってみたいですね。お話をうかがうと、人生の要所要所で大きな決断をして、いまの翻訳の仕事にたどり着かれたのだなと思いました。何があっても乗りきっていけそうなタフネスを感じました。

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