アメリア会員インタビュー

翻訳だからこそ続けてこられた

加賀山 :出版翻訳もなさったそうですが。

守井 :以前、インターネットの翻訳オーディションを受けましたら最優秀賞をいただいて、1冊訳しました。3カ月間かかりきりだったのですが、これはちょっと生活が苦しいということで実務翻訳に戻りました。

加賀山 :出版翻訳は全体として厳しくなっていますが、書籍でお好きな分野などありますか?

守井 :自己啓発本でしょうか。クリスプな(歯切れの良い)感じの英語が好きなので。翻訳協力したのも、プロジェクトマネジメントに関する本でした。『はじめてのプロジェクトマネジメント12のステップ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)ですが、これは初めてリーディングをした本でもあります。
 その後アメリア経由も含めて、十数件リーディングをしました。その中には、すぐに出版につながったボブ・ディランの自伝もありますが、この手の音楽やアーティストにあまり詳しくなかったので、読み進めるのに苦労しました。

加賀山 :在宅から会社勤めになったときに、すでに引き受けていた翻訳の仕事ができなくなるようなことはありませんでした?

守井 :実務翻訳は出版翻訳とちがって納期が短いので、会社勤務に移行するときにもあまり支障はありませんでした。

加賀山 :オンサイト、オフサイトと変わってもずっと続けておられるということは、やはり翻訳という仕事がお好きなのですね。

守井 :結局、性に合っていたのだと思います。最初の会社を辞めたのは不本意でしたが、そこで何をしようかと考え、結果として良い仕事にめぐり合いました。育児や介護などの人生の折節にペースダウンしながらも、細く長く続けてこられたのは、この仕事だったからこそだと感謝しています。

加賀山 :実務翻訳をやっておられたときに、印象に残っている仕事はありますか?

守井 :アメリカのある資産運用会社の運用レポートをレギュラーで依頼していただいていたのですが、ファンドの内容も英語の表現もほかと比べて格段に難しくて、かなり苦労しました。この案件を発注された翻訳会社でクオリティマネジメントをしている元証券会社のかたも難しいとおっしゃるくらいの内容で、複雑なファンドの仕組みや、MBA(経営学修士課程)で習うような概念や用語が次々と出てくるのです。でも、それを独学で何とか理解し、訳しつづけたことが実力になったと思います。ずいぶん鍛えられました。

加賀山 :そういう苦しい体験というのは、あとで役に立ちますね。

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