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坂田:さて、そろそろ今回出版された児童書『クジラのウォルドーとココナツ島の魔女』についてお話を伺いたいと思います。まず、どんな本なのか教えてください。 子安:ウォルドーというマッコウクジラが主人公の冒険物語です。短編が三つ収められていて、第一章は、弱虫だったクジラのウォルドーが、親友のお月さまを助けるために海の底までもぐっていき、おばけダコの一味とたたかう物語です。第二章は、ウォルドーが北極の海に出かけるのですが、南に向かって帰るのが遅れ、氷に閉じ込められて出られなくなってしまうという話、第三章は南の海でドラゴンの子どもと仲良くなり、力をあわせて悪い魔女をやっつける話です。作者のアラン・テンパリーさんはもと船乗りという方で、どのお話も海の描写がとても美しいんです。 坂田:この第一章は、2001年3月に開催されたアメリア新人翻訳コンテスト<第10弾>の課題でしたね。まず、コンテストの課題文を初めて読んだときの感想は ? 子安:難しいな、と思いました。原文を読んでいると、情景がすごく目に浮かぶんです。でも、いざそれを日本語にしようとするとなかなかうまくいかず、七転八倒……。まあそれはいつものことなんですが(笑)。今回は「子どもにも理解できる表現で」という出題者からのコメントがあったので、いっそう苦しかったです。英語ではなんてことない簡単な表現が、日本語にすると急に難しくなってしまうことがあるん です。 よね。そこをどうやって子どもにもイメージがつかめるような表現にするかに、非常に苦しみました。 坂田:子安さんは見事最優秀賞に選ばれ、翻訳者に決定したわけですが、コンテストに応募した訳文はそのまま使われているのですか? 子安:いいえ、その後も編集者の方と話し合いながら、かなりの手直しをしました。コンテストに応募した訳文と最終的な原稿が大きく変わったところというと、(1)「ですます調」を「〜だ調」に変えた (2)キャラクターを際立たせるよう登場人物たちの口調に工夫した、という点です。課題文を読んだときには「ですます調の感じかな」と思ったのですが、第二章以降、主人公のウォルドーくんがどんどん元気いっぱいになっていくんですね。それで担当の編集者の方と相談して、「元気よくいきましょう」ということになりました。 登場人物それぞれの描き分けについては、コンテストの講評でも指摘されていたので、いろいろと工夫してみました。 坂田:例えば、どんな風に? 子安:そうですね。「ささやきの魔女」が出てくるのですが ”神秘的でちょっと不気味な感じ” なので口調もその雰囲気が伝わるように工夫しました。 例えば……