瀬尾 友子さん | 【Amelia】在宅でできる英語などの翻訳の求人・仕事探しはアメリア - Page 3

アメリア会員インタビュー



もっと腕を磨かないと独り立ちできない。思い切って翻訳専業に

坂田:映像翻訳の仕事は、いつごろから始めましたか?

瀬尾:当時はCS放送が始まったばかりの頃で、とても恵まれた時期でした。新しい会社がたくさんできていて、そういうところから仕事がもらえたので、勉強会を始めてしばらくしたらトライアルに合格して、少しずつ仕事を始めていました。講師の先生から紹介された仕事もありました。

坂田:昼間は翻訳会社に勤めながら、二足のわらじですね。

瀬尾:そうですね。2年間くらい兼業でやっていました。徹夜もかなりましたよ。一睡もせずに翻訳を仕上げて、制作会社に納品してから、そのまま会社に出勤するとか。もう、ここで頑張るしかないと必死でした。でも、そういう生活を2年間続けてみて、これじゃダメだと思って……。そもそも実力がないうえに時間もないから、仕事が先細っていくのが見えてきたんです。

坂田:仕事の依頼が減っていくとか?

瀬尾:仕事がたくさんあった時期なので、まったく来なくなるということではないのですが、同じ制作会社の仕事をしている友人には仕事が途切れないようにコンスタントに依頼がきているのに、私には月に1本だけとか。このままじゃダメだと思い、夫にしばらく食べさせてくださいと頭を下げて、会社を辞めて翻訳業に専念することにしました。

坂田:ご主人は理解を示してくれたんですね。

瀬尾:はい、「好きなことを思い切ってやったら」と言ってくれました。きっと、私がイライラしている姿を見ているのがイヤだったんじゃないかと思います。会社を辞めて翻訳業に専念したのが2000年です。それまで仕事をいただいていた制作会社に連絡を取って、オンサイトでスポッティングの仕事をさせてもらうようになりました。

坂田:スポッティングの仕事というのは?

瀬尾:今ではパソコン一台で字幕を入れられるSSTなどのソフトウエアがありますが、当時はまだ主流ではなく、翻訳者に翻訳を依頼する前に、ビデオトロンという機械で字幕のタイミングや長さを決めていくスポッティングという作業をするのが一般的でした。そのスポッティング要員として手をあげて、制作会社に通い始めたんです。自宅で仕事の依頼が来るのを待っているより、出かけて行ったほうがチャンスが増えるという思いもありました。当時はミュージックTVの番組の中の15分間のアーティストインタビューなど、短い仕事もけっこうあって、そういうものの字幕翻訳をたくさんやらせていただきました。そうこうするうちに徐々に長いものも依頼されるようになって、仕事が増えていきました。

坂田:他にも、仕事を増やす努力をしましたか?

瀬尾:フリーになってすぐに翻訳雑誌に載っていた都内にある映像翻訳会社、多分10社くらいだったと思いますが、すべてに履歴書を送りました。返事があったのは1社だけでしたが、そこがたまたま吹替翻訳者をもう1人増やそうと思っているタイミングだったということで、すぐにお仕事をいただけることになりました。

坂田:専業になって、仕事は順調に増えていきましたか?

瀬尾:映像翻訳の仕事で食べられるようになったのは、専業になって3年目くらいからだと思います。その前から兼業で仕事をしていたので、仕事を始めてからというと5年目くらいですね。作品の選り好みはせず、本当になんでもやりました。アダルト作品もやりましたよ。1本90分だと、普通の作品では字幕1000〜1200枚くらいなんですが、セリフが少ないから200枚くらいしかないんです。そんなときは、1日にどれくらいやれるか挑戦してみよう、というふうに何かしら目標を作ったりして。映像の場合、尺の短い仕事や、納期が短いとか翻訳料が安いなど条件の悪い仕事など、仕事に幅があるので、新人でもそういうことろから最初の仕事のチャンスをつかむことはできると思います。難しいのは、そこからステップアップして、生活できる収入が得られるように、コンスタントに仕事を続けていくことのほうですね。

坂田:新人の仕事から抜け出してステップアップするためには、何が必要でしょう?

瀬尾:私の場合は、今でも実力は十分ではないと思いますが、まず、自分ができないということを認めた時点で、ちょっと気が楽になりました。できないならできないなりに、調べものは徹底的にやろうとか。納品後に担当者から問い合わせが来たときに、きちんと説明できれば安心してもらえるかなと考え、常に丁寧に調べて、きちんと答えることを心がけていましたね。あとは、本当にまわりの方々のおかげだと思っています。

坂田:途中でシナリオの講座に通ったりもしたようですね。

瀬尾:はい。吹替のセリフまわしがよくないなと思ったので、シナリオを勉強したら少しはよくなるかと思ったんです。5回だけの短い講座だったので、かじっただけで終わってしまいましたが、それでもどこかで少しは役に立っているんじゃないかと思います。