アメリア会員インタビュー

映画祭の字幕翻訳ボランティアで翻訳賞を受賞。「ボランティアで経験を積むのは、学習中の方には多いにプラスになると思いますよ」

岡田 :字幕翻訳からスタートし、現在は吹替翻訳メインにご活躍の橋本さん。過去に字幕翻訳の受賞作品もあるとお聞きしました。

橋本 :字幕翻訳の仕事をはじめたころ、映像翻訳のクラスでお世話になった先生のご紹介でドキュメンタリーの字幕翻訳のボランティアをしていました。「世界自然・野生生物映像祭」という自然や野生生物をテーマにした映画祭が2年に1度、富山県で開催されるんですが、そちらで上映される作品の字幕翻訳を担当し、2009年に翻訳賞をいただきました。

岡田 :ボランティアのお仕事だったんですね。

橋本 :はい。当時はデビューしてすぐの頃でまだ時間に余裕もありましたし、経験を積むことがなにより一番うまくなる近道だと思ったので、いろいろな映画祭のボランティアをやらせていただきました。大きなスクリーンで自分の訳が見られるので、読みにくい表現や文字数など、実際に自分の目で見て勉強することができ、とてもいい経験になりました。駆け出しのころにそうした映画祭のボランティアで経験を積むのは、学習中の方には多いにプラスになると思いますよ。

岡田 :それはたしかに素晴らしい経験になりそうです! 橋本さんは映画祭で受賞され、自信も技術も身につけることができましたね。

橋本 :うーん、どうでしょう、その頃から字幕が向いてないと思い出したから(笑)。でもたしかに「だいじょうぶ、この道でやっていける」という自信にはなったと思います。

岡田 :「この道でやっていける!」―――それは大きな自信です。

橋本 :そうですね。この頃に字幕の仕事の経験を多く積んだことで、吹替の仕事に生かすことができるようになりました。実は吹替の翻訳者って、当然のように字幕翻訳ができると思われているところがあるんです。吹替の作品でも、歌や外国語の部分は字幕を使うようなシーンがけっこうありますから……。字幕の力あってこその吹替翻訳、という感じです。

岡田 :なるほど、吹替の仕事に、字幕も入ってくることがあるんですね。吹替翻訳にはどのようなタイミングで移行されたんですか?

橋本 :2007年に吹替の講座を1年間受講し、口の動きに合わせたセリフを作るリップシンクの技術や台本の書き方などを学び、コースを終えて半年ほどしてから少しずつお仕事をいただくようになりました。2008年に体調不良の翻訳者さんのピンチヒッターとして歴史大作のDVDの後編を担当させていただいたのが本格的な吹替デビューになりました。

岡田 :吹替をはじめてみていかがでしたか?

橋本 :やはり吹替のほうが自分には向いていると実感しました! 字幕の尺の細かさに比べ、吹替は肉眼でわかる口の動きに合わせるレベルですし、ある程度は声優さんが合わせてくださる。やっぱりおおざっぱな私には吹替が向いているんです(笑)。