アメリア会員インタビュー




あきらめずに進んでこられたのは恩師とクラスメイトのおかげ

坂田:その後、出版翻訳のお仕事もするようになったのですよね。

野津:はい。字幕の仕事がメインでしたが、出版翻訳の下訳のようなことも時折させていただいていました。私が出版翻訳をめざしていることは先生ももちろんご存じで、「そろそろやってみますか」と言われ、いただいた本が、私にとってデビュー作になります。

坂田:それは何という本ですか?

野津:『鉄仮面』という作品です。『三銃士』の続編ですね。劇画プラス解説という構成の薄い本でしたが、完璧なものにしなければと思って、手を尽くして取り組みました。

坂田:1冊目のお仕事を得るのも大変ですが、2冊目、3冊目と続けていくのも大変ですよね。野津さんの場合はいかがでしたか?

野津:2冊目は、ありがたいことに、また先生からいただきました。3冊目は、オーディションを受けて合格しました。ただ、これまでほんとうにいろいろなことを経験してきたうえで思うのですが、デビューしたり2〜3冊出させていただいたりすることは、それはそれでもちろん大変ですけど、仕事をずっと続けていくことは、さらに大変なのでは、という気がします。

坂田:続けることが大変だということですが、野津さんが出版翻訳を途切れることなくずっと続けてこられたのは、どのような支えがあったからでしょう?

野津:途切れたこともありますよ(笑)。失敗もいろいろあります。正直、不安や迷いの連続なんですよ。ただ、通学していたときに、先生やハイレベルなクラスメイトの方々から訳者としての姿勢みたいなものを教わったことは大きいですね。この道をあきらめかけたときに引き戻してくれたのもクラスメイトでした。その後、翻訳塾で仕事をさせていただきながら、たくさんのことを覚えました。さらには、翻訳会社を通さず出版社とダイレクトで仕事をさせていただくようになってからのほうが今ではずっと長いのですが、その過程でも、いろいろなことを知りましたし、また意識を改めたりしてきました。

坂田:仕事を通して学んだことで最も大きなことというと?

野津: “商品としての訳文をつくること”でしょうか。

坂田:具体的には、どのようなことに気をつけているのでしょう?

野津:ジャンルによって少し違いますが、共通しているのは、英文を正しく読むこと、その上で、自然で読みやすい訳文をつくること。細かく言えば、読者の目線を忘れない、歯切れのよさやリズムに気をつける、原書の持ち味を活かす、などいろいろありますね。フィクションなら、登場人物に寄り添う、とか。読み込みにしても調べものにしても、妥協はなし。1冊1冊が真剣勝負ですから。

坂田:なるほど。その1冊の出来が良くなければ、次の仕事はこないかもしれない、ということですね。

野津:フリーランスで仕事をするというのはそういうことだと考えています。体調管理も大切ですね。毎日何かしら運動しますし、食事にも気を配っています。
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