アメリア会員インタビュー

意外な理由で飛び込んだ出版翻訳の世界 恩師の紹介でノンフィクション翻訳デビュー

濱野 :20年ほど安定して実務翻訳の仕事を受注されてきた依田さんが、出版翻訳に興味を持つようになったきっかけはなんだったのでしょうか? 何か転機があったのでしょうか?

依田 :当初はエンジニアだけが読むような専門的なマニュアルばかりを請け負っていたのですが、インターネットが普及するようになると、実務翻訳の仕事の中身が少しずつ変わってきました。ウェブに公開するためのマーケティング資料など、一般の方々が読むようなドキュメントの仕事が徐々に増えてきたんです。以前は対象読者がプロなので技術的内容の正確性がもっとも重要だったのですが、今度は「読みやすさ」も求められるようになりました。そこで文章力をつけるために、フェロー・アカデミーの通学コースに通うことにしました。

濱野 :実務翻訳のコースですか?

依田 :IT系の知識や翻訳スキルは仕事を通してある程度身についていましたので、日本語の表現力を集中的に学ぶために「出版基礎」(当時は「文芸基礎」)の授業を受けました。ただ、あくまでも文章力をつけるためであって、当初は出版翻訳自体にはそれほど興味はありませんでした。別世界という感じでしたから。

濱野 :表現力をつけようと飛び込んだ出版基礎のクラスで、昔から好きだった「本」と「翻訳」がついに出合った。

依田 :そのとおりです。とにかく課題を訳すのが楽しくてたまりませんでした。それに、初めて通ったクラスで成績優秀者に選んでいただいたことがとても嬉しくて……。そのときから、出版翻訳という選択肢を意識するようになりました。

濱野 :昔から本がお好きだったとすれば、必然といえば必然ですよね。そこから、集中的に出版の学習を?

依田 :家庭の事情でしばらく間が空いたりすることはありましたが、実務翻訳の仕事を続けながら、加賀山卓朗先生のクラスにあわせて7年ほど通いました。

濱野 :そのあいだに、リーディングや加賀山先生の下訳のお手伝いなどもされていたのでしょうか。

依田 :はい、下訳のお手伝いは早い段階からときどきやらせていただきました。そのうちに先生からリーディングの仕事なども紹介していただき、2014年に初めて単独訳でヴィレッジブックスさんからノンフィクション作品を出すことができました。

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