坂田:今回のゲストは、オンサイトでIT翻訳のお仕事をしながら、ご自身が興味のある環境関連の日英翻訳をボランティアでされている上田さおりさんです。上田さんが翻訳者を目指すまでの道のりは結構長く、さまざまな勉強法を実践されたようですね。そのあたり、詳しく聞かせてください。よろしくお願いします。
上田:はい、よろしくお願いします。
坂田:大学までは、翻訳はもちろん、語学にもあまり興味がなかったそうですね。
上田:そうなんです。大学は経済学部でした。でも、かといって数学が好きだったわけでもなく、学校の教科はどれも平均的でしたね。卒業後、普通に就職して働いていましたが、ちょっとしたきっかけがあって、仕事を辞めて海外に出てみようと。
坂田:旅行ですか?
上田:後半は旅行もしましたが、最初の3カ月間はイスラエルのキブツでボランティアをしました。キブツとは、イスラエルにある共同体社会のことで、労働に対して個々に報酬は受け取らず自給自足的な生活をしています。イスラエルには大小約270のキブツがあると言われています。住民だけでは人手が足りないということで常時海外からのボランティアを受け入れていて、ボランティアは掃除や料理、牛の乳搾りやマンゴーの収穫などを手伝い、食事や住む場所などが与えられます。語学留学も考えましたが、経済的な理由もあってキブツでのボランティアに参加しました。
坂田:イスラエルということですが、日常会話は何語ですか?
上田:ボランティアは世界中から集まってきているので、基本的にコミュニケーションは英語です。ただ英語といっても訛りのある人も多く、それがネイティブのスピードで話すので聞き取るのが大変で……。私が理解するのを待たずに、どんどん話が進んでいくときには孤独を感じました。ここでの3カ月間で、コミュニケーションツールとして英語力がもっと必要だなと思い始めました。
坂田:3カ月のボランティアの後、どうしましたか?
上田:ヨーロッパをあちこち旅して回りました。旅行中、英字新聞を買ってカフェに入り、知らない単語が出てきたら単語帳に書き留めて辞書を引いて意味を調べて、そんなことを何時間もしていました。
坂田:単語帳を作るなんて、普通、旅行中はあまりしませんよね。
上田:そうですね。でも、忘れたくなかったんです。英語で生活をしてみて、もっと勉強したいと思って、でも帰国して日本の生活に戻ったらきっと忘れてしまって勉強しないだろうな、と思ったので、モチベーションが上がっている今エンジンをかけないと、と考えたんです。
坂田:そうですね、確かに帰国したら日常生活に流されてしまいそうですね。旅行はどのくらい続けましたか?
上田:10カ国ほど転々としながら、結局半年くらい旅行を続けましたが、さすがにそろそろ社会復帰をしなければと思い日本に戻ることにしました。
坂田:海外で9カ月ほど過ごしたことで、何か変化はありましたか?
上田:英語への関心が深まり、帰国後は英語を使った仕事を探したいと思いましたが、実績はないし、履歴書に書ける語学の資格もないし、応募すらできない状況でした。英語がどのくらい上達したかは自分ではわからない、ということもあって、それを自分自身感じるためには語学関係の試験を受けるしかないと思いました。とりあえず英語とは関係ない仕事を見つけましたが、転職も視野に入れつつ、私の長きにわたる受験の歴史がそこから始まりました。
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