アメリア会員インタビュー

医療関連でもさまざまな仕事

加賀山 :医療関係の翻訳というと、高度に専門的という気がしますが、ふつうの翻訳とはずいぶんちがうものなんでしょうか?

安部 :そうですね。医師や研究者の論文になると専門家向けで、まったく一般向けではないので、まず医学用語が訳せるかどうかが鍵になります。

加賀山 :どうやって調べるのですか?

安部 :ある訳語が実際に論文などで使われているかどうか、インターネットなどでひたすら調べます。一般的な用語はすぐにわかるのですが、まだ定訳がないものはむずかしいですね。

加賀山 :研究の途中だと、けっこう決まっていないものがありそうです。

安部 :はい。医師の知識レベルにはなかなか到達できませんが、論理の流れが正しいかどうか考えて、はっと気づくこともあります。論文であれば、流れがありますので。

加賀山 :お仕事はどういう内容が多いのですか。医療関係といってもいろいろありそうですが。

安部 :これと決まっているわけではなくて、依頼されたものを訳すのですが、たとえば、医学論文、医薬品や医療機器のパンフレット、化粧品の説明書とか。訳文も、きっちりした感じから柔らかい感じのものまで考えなければならないので、おもしろいですね。大学院などで論文に触れる機会は多かったので、硬い文章にも慣れています。医療分野の製品のホームページの訳を頼まれたときには、庶民的な柔らかい訳を心がけますし、つねに対象読者と使用目的を意識して訳します。

加賀山 :柔らかく訳すにしても、医療だとまちがえると大ごとですよね。緊張しませんか?

安部 : します。数字についてはとくに厳しいですね。チェッカー時代には、命にかかわる仕事だから慎重に、と念を押されました。

加賀山 :これから仕事の分野を広げていかれますか?

安部 :医療関係を中心として、観光関連の翻訳なども手がけてみたいですね。最近、新しい会社から、観光関連のお仕事の打診をいただくようになりました。ポストエディットといって、機械翻訳した訳文に対して、おかしい部分があれば修正し、訳しなおす業務です。興味のある分野ですし、新しい形の翻訳だと思いますので、楽しみです。ゆくゆくはノンフィクションの翻訳もできたらいいなと思います。本だと名前が載りますから、一度は訳してみたいです。

加賀山 : フィクションはどうでしょう。

安部 : フィクションは……興味はあるんですが、またちがった意味でたいへんで、時間がかかりそうだなと思います。アルクのミステリーの翻訳コンテストにも応募したことはあるんですが。

加賀山 : お仕事のうえで苦労されたことは?

安部 : できると思って引き受けたら、ものすごくむずかしくて困ったことがありました。そういうときにはたいへんですが、毎回ちがう仕事が来て勉強になりますし、自分の訳したものが患者さんの役に立つという点で、非常にやり甲斐があると思っています。私自身は医療関係者ではないんですけれど、医療業界の端っこにいて、お手伝いをしているような感覚です。納品するときには、やり終えたという充実感がありますね。

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