アメリア会員インタビュー

子供向けの翻訳で注意していること

加賀山 :子供向けの翻訳で、内容とか表記とか、とくに注意していることはありますか?

片神 :翻訳そのものの話ではないのですが、ふだんから、子供向けに書かれた本は自分の好みとは関係なく目を通すようにしています。本だけでなく、歌やサブカルチャーも含めて、いまの子供がどういうものに心を引かれるかを知りたいので。
 訳す際には、編集のかたから表記などについて指示があり、それにしたがいます。科学などの知識を得るものは、子供向けだからといって何もかも簡単にしてしまうと知識が身につきませんから、むずかしいキーワードを入れながら、それを子供にもわかるように補足して訳していきます。

加賀山 :自分で原書を探して売りこみもされますか?

片神 :サイエンス誌を発行している通称トリプル・エイ・エス(AAAS米国科学振興協会)が、毎月書評誌を出しているので、おもしろそうなものを探して企画書を出版社に出しています。でも、なかなか通りませんね。

加賀山 :企画はなかなか通りませんよね。

片神 :とくにむずかしいのは、「絵」の印象がちがうところです。外国の子供が好む絵柄と、日本の子供が好む絵柄がずいぶんちがうのです。日本の子には日本の漫画っぽい絵が受け入れられやすい。子供向けの科学書では、絵を見ながら文で説明するというかたちで両者が一体化しているので、絵だけ差し替えるわけにもいかず……となることもあります。
 そして、本を好きになるのは子供、買うのは大人ですから、どちらにも好印象を与えないと企画が通りません。そこにも売りこみのむずかしさがありますね。

加賀山 :なるほど。けっこう難題ですね。

片神 :大人は学習効果を期待していて、子供は勉強の本より楽しい本を、といった面があります。

加賀山 :最近、いいなと思った原書はありました?

片神 :何年かまえにすごく気に入った絵本があって、レジュメを数社に持ちこんだのですが、反応はよくなく、企画は通りませんでした。ところが、それが別の出版社で翻訳されて、次の年の絵本翻訳大賞を受賞したんです。編集のかたの好みの問題もあるし、時の運もありますが、ちょっと残念な思い出ですね。

 
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