アメリア会員インタビュー

英語の映像翻訳で得たスキルをヒンディー語翻訳にも応用。「いかに明るく、嫌味なく仕上げるかというのがインド映画なんです」

岡田 :大学卒業後すぐにフリーとして英語の映像翻訳のお仕事をはじめられた藤井さん。今は英語だけでなく、インド映画も数々翻訳し、お忙しい毎日を過ごされています。英語の字幕翻訳で得たスキルがヒンディー語の字幕翻訳にも役立つようになったんですね。

藤井 :そうですね。大学にいるころは自分がヒンディー語の字幕翻訳をするようになるとは思っていませんでしたが、今では英語での経験を生かしながらヒンディー語の翻訳をしています。でもインド映画の需要は少ないので、マーケットとしては厳しい世界です。

岡田 :『ムトゥ』のようなヒット作が今後続々と出るといいですね。インドの映画はよくインド料理のレストランで見かけますが、映像的にとてもおもしろいので見入ってしまいます。言葉がわからなくても観客を飽きさせない、独特の魅力がありますね。

藤井 :それをもっとたくさんの方に知ってほしいですね。よく「インド映画っていつも踊ってるか歌ってる」って言われるんですが(笑)、実際、歌はとても大事なストーリーの一部なんですよ。でも私は大学1年のころは見てもわからないことが多すぎて、4、5分あるような歌のシーンは飛ばして見ていました。そのうちにだんだん言葉の意味がわかるようになると、歌がとても重要だったということに気づきました。インド映画は、民間信仰と密接な関係があり、神話の舞台を映画化したものからスタートしたものなんです。それは歌物語とも言えるもので、舞台がベースにあると言ってもいい。そこに気づいてからは、歌の部分をじっくり見るようになりました。

岡田 :そうだったんですか。なるほど、あれは舞台が進化したものなんですね。

藤井 :はい。だから多くのインド映画は歌がひとつのストーリー。歌詞を理解してこそのインド映画なんです。インドは詩の文化で、詩が生活に密着していて、字が読めない人でも歌詞はわかるという人もいる。民間伝承が根強い文化ですから、口々に語りつがれたお話が歌詞になっていることもあります。日常の恋愛ストーリーに文語的な表現の詩が登場したりすることもよくあります。外国人からするとわかりづらいですけどね。

岡田 :初めて知りました! インド映画、ますます興味深い。

藤井 :でも近頃はだいぶ変わってきて、かなりきわどいシーンなんかもでてくるようになりました。もちろんハリウッドほどではないですけど(笑)。インド映画って、ベッドシーンなどを生々しく表現せず、歌や踊りで象徴的に表現することもあるんです。でもそれが実は主人公の妄想のなか、なんてこともあったり。いかに明るく、嫌味なく仕上げるかというのがインド映画なんです。

岡田 :おもしろいですね、伝統的な詩の世界と現代映画がみごとにコラボしているインド映画。さっそく見てみたくなりました!