アメリア会員インタビュー


ロシア語を活かしてキャリアを積んだ20代・30代 突如訪れた北海道移住

濱野 :ロシア語や英語の実務翻訳、通訳もされていたとのことですが、出版翻訳の道を模索するようになったのはいつ頃ですか?

森村 :もともと本を読むのは大好きだったので、漠然と憧れはありました。翻訳学校に通うまでには至りませんでしたが、講演会や単発の講座に参加したりしていました。あるとき、翻訳関係の雑誌に目を通すうちに「アメリア」について知り、資料請求をしたところ、会報の見本誌を同封していただいたことがあるんです。何気なく翻訳トライアスロンの結果発表に目を通していたら、なんと学生時代に寮生活をともにした宇丹貴代実さんが総合2位に入賞され、お写真が掲載されているではありませんか! かけ出し未満の自分との差の大きさに、ひとり部屋で茫然としました。

濱野 :なんという偶然! 宇丹さん、いまも出版翻訳の世界で大活躍してらっしゃいますよね。そのときは、連絡を取られたんですか?

森村 :思い切って久しぶりにお電話し、どのように勉強されたかなどをお尋ねしました。愛知から東京まで勉強に通っていらっしゃるとのことで、出版翻訳者への道の険しさを実感しました。

濱野 :でも、森村さんは諦めなかった……

森村 :「それでもやりたい。いつか本作りの世界の一員となりたい」というのが私の出した答えでした。その後、勤務先が変わったあとも、実務翻訳の仕事や出版翻訳の勉強を可能な限り続けていくことになります。

濱野 :なるほど、会社での外国語を使った業務や実務翻訳に携わりながらも、出版翻訳の夢も追いつづけたということですね。と、まだ北海道の話は出てこないわけですが、このあとでしょうか?

森村 :はい。船舶通信関連の会社に勤めていた頃、結婚相手の仕事の都合で北海道に住むことになり、やむなく退職しました。ただ、学生時代から北海道には何度も旅で訪れ、いつか住んでみたいと思っていた憧れの地でしたので、大きな不安はありませんでした。

濱野 :実際に住んでみて、いかがでしたか?

森村 :思っていたより「ふつう」の暮らしでした(笑)。海に近いこともあり、内陸の旭川や富良野に比べると冷え込みません。もちろん、大雪と地吹雪は厄介ですが……。春から秋にかけての半年は、爽快な風と青空を存分に楽しむことができます。人や車、商業施設の数もほどほどで、30分も車を走らせれば雄大な景色の一部になることができます。20代30代と、刺激と変化に満ち満ちた東京暮らしを経験していたので、いまの自分にとっては、この町の素朴な落ち着いた暮らしは理想的と言えます。