アメリア会員インタビュー


慣れない北海道での子育て 苦難を乗り越えて、再び翻訳者の道へ

濱野 :北海道に引っ越してからは、翻訳のお仕事や学習は続けられたんですか?

森村 :出版翻訳のほうは、とにかくできることは何でもする方針でした。通信講座も受けましたし、アメリアを含めいろいろなサイトに登録して、トライアルやオーディションをいくつも受けました。ロシア語や英語の本のリーディングをぽつぽつ依頼されるくらいにはなりました。

濱野 :東京時代よりもむしろ一歩進んだ感じですね。実務翻訳のほうも続けたのでしょうか?

森村 :はい、ご依頼があるかぎり続けました。一時期は、実務翻訳をこなすだけで手一杯になり、上の子が生まれるまえは臨月でも徹夜で仕上げて納品したこともありました。けれど、離乳食が始まる頃、子供にかなり注意が必要な食物アレルギーがあることがわかり、それに対応するために翻訳の仕事をセーブし、子供の世話が最優先の生活となりました。

濱野 :そんななかでも、出版翻訳者への道をあきらめなかったのですね。再び動き出すのはいつ頃ですか?

森村 :子供の食事と体調の管理にもだいぶ自信がついてきたところで、武者修行よろしく、アメリアを通じて書籍関連の仕事に片端から応募しました。その過程で、リーディングや旅行ガイドブックの下訳などの仕事をいただけるようになりました。その後、ディスカヴァー・トゥエンティワンさんから、初の訳書となる『世界の自己啓発50の名著―エッセンスを読む』の翻訳をご依頼いただきました。さらに、会員プロフィール検索を通じて講談社さんとご縁ができ、2007年には『1日で人は変われる!』を上梓することができました。

濱野 :順風満帆じゃないですか。ただ、おふたりの小さなお子さんを育てながらということで、大変ですよね?

森村 :実は『1日で人は変われる!』のお仕事を終える頃、上の子が小学校に入学し、下が幼稚園に入園。それぞれの世話と親の参加が必要な行事で、毎日が手一杯となってきました。近親の不幸なども重なり、お仕事のご依頼があっても、お断わりせざるをえない状況がまたしばらく続きました。

濱野 :なるほど、またここで中断を強いられるわけですね。仕事を休んでいるあいだは、翻訳から完全に離れていたのでしょうか?

森村 :いえ、締切に責任を持ってお仕事ができないのだったら、「仕事でなければいいんだ」と気持ちを切り替えて学習のほうを続けることにしたんです。それで、フェロー・アカデミーのマスターコースなどの通信講座を受講しました。でも、取り組むほどに自分の至らなさを突きつけられました。やりたいことがあれど、やりたい方向にやりたい速度で進めない日々。幼子とそれを取り巻く世界とに密にかかわり合うとともに、打たれ強さに磨きがかかった時期でした(笑)。

濱野 :まさに、母は強し! 仕事ができないから、学習に切り替える……前向きです。 そんな努力が、しばらくの時を経て今回の最新訳書に繋がるわけですね。

森村 :そうこうするうちに子供たちは育ち、上が小学高学年、下が小学校入学となり、行事がある程度まとまるにつれて余裕も生まれてきました。そこで、アメリアの「翻訳お料理番」への取り組みも再開。『認知症の人を愛すること』のお仕事が始まるまで、クリック差で提出できなかった1回を除き、3年間連続で投稿しました。

濱野 :す、すごい……継続は力なりですね!