アメリア会員インタビュー




下積み修業時代には未経験から映像翻訳にも挑戦

坂田:講師の仕事をしながら翻訳の勉強を続け、翻訳者として最初のお仕事をしたのは、いつ頃ですか?

野津:まだ訳者などとはまったく言えないレベルですが、大学を卒業する前から少しのあいだ、図書館に納める絵本に訳をつける、という仕事をさせていただきました。名前も出ませんし、翻訳料もささやかでしたが。

坂田:では、本格的なお仕事となると?

野津:卒業後しばらくしてある翻訳会社のトライアル付きのセミナーを受け、そのトライアルに合格して一つのチャンスをつかみました。課題はノンフィクションで、セミナーのことは、情報誌『Amelia』(現アメリア、当時はFMCの月刊情報誌)で知りました。勉強を始めた頃からずっとフィクションの翻訳をめざしていましたが、「分野をしぼりすぎると狭き門になってしまう、少し方向転換してノンフィクションも視野に入れよう」と考えはじめた頃のことです。前後して見つけたのがこのトライアルで、幸い合格の通知をいただくことができました。

坂田:方向転換が功を奏したわけですね。合格して、この翻訳会社から仕事を受けるようになったのですか?

野津:すぐに、ではありません。実務経験はまだないに等しかったので、合格とはいえ「半仕事・半勉強」で下積みの修行をさせていただいたようなかたちです。実力をつけるには実践あるのみ、ということだったと思うのですが、まだ一人前ではないにもかかわらず、報酬をいただいていました。むろん、通常より低い金額です。でも、単なる「勉強」か、それとも、わずかでも報酬をいただく「仕事」か、そこには大きな違いがあったと思います。

坂田:トライアルの合格は、翻訳者としての即戦力というよりも、ベースとなる英語力と日本語力が十分であるかどうかの判断で、翻訳者として育てていこうという意味だったということですね。

野津:その翻訳会社の社長は、私にとっては翻訳学校の先生に続く二人目の恩師ですが、翻訳塾というかたちで何人もの塾生を育ててくださっていました。単なる勉強ではなく仕事として翻訳させていただいたことは、ほんとうに得がたい経験でした。

坂田:翻訳者は誰でも最初は実務経験ゼロです。このように育ててくれる方に出会えたことは大きな財産ですね。翻訳の仕事はどのような内容でしたか?

野津:はじめは映像翻訳がメインでした。

坂田:映像翻訳ですか!? 意外ですね。そちらの勉強もなさっていたのですか?

野津:いえ、勉強したことはありません。それに、始めたきっかけは、専攻だったフランス語で仕事があったから、だったんです。

坂田:映像翻訳、とくに字幕翻訳には多くのルールがありますが、ルールはどのように勉強しましたか?

野津:基本的なルールは、社長である先生からじかに教わりました。あとは、プロの方の下訳をさせていただいたり、その方に自分の訳を見ていただいたりして学びました。よく、人の訳を見て盗めと言われますが、それを実践していた感じです。

坂田:今は出版のお仕事をなさっていますが、字幕翻訳を経験したことで現在役に立っていることはありますか?

野津:字幕では、ある程度長さのある文をわずかな字数に凝縮します。その作業は、とても意義があったと思います。数をたくさんさせていただいたのも、とてもありがたいことでした。

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