兵庫県でITテクニカルやゲームの翻訳者としてご活躍の稲積拓也さん| 【Amelia】在宅でできる英語などの翻訳の求人・仕事探しはアメリア

アメリア会員インタビュー

稲積 拓也さん

稲積 拓也さん

IT系の実務翻訳の世界を知る

プロフィール

英日翻訳者。大学卒業後、いくつかの企業を経て翻訳会社で経験を積んだ後、フリーランスとして独立。いつかは翻訳の仕事に就きたいと考えていたことから、会社員時代に翻訳学校で産業翻訳を学び、それがきっかけでこの世界に入る。
通信会社とメーカーで通信機器を担当したこと、会社員時代に最初にいただいた在宅翻訳の仕事がサーバー/ストレージ関連であったことから、ITが専門分野に。翻訳会社でチェッカーとして多くの翻訳に触れるとともに、翻訳以外のさまざまな経験を積めたことが独立後も大いに役立っている。
最近では新しい技術や用語が登場するペースが非常に速く、わずか数ワードの翻訳に腐心することも少なくないが、さまざまな知識を得られることに魅力を感じている。
プライベートでは、フリーランスになってからの歩くことさえ少ない運動不足に危機感を覚えて始めたランニングが趣味になり、駅伝などにも参加。今年はコロナ禍で中止になったマラソン大会に出ることが楽しみでもあり、練習をサボり気味になっていることが不安でもある。

さまざまな分野の製品にかかわる仕事

加賀山 :今日は兵庫県でおもにIT系の実務翻訳をしておられる、稲積拓也(いなづみ たくや)さんにお話をうかがいます。プロフィールによると、大学卒業後に通信会社などを経てメーカー勤務を1年半、そして翻訳会社に8年間勤められたあと、フリーランスになって8年目ということです。今のお仕事ですが、具体的にはどのような内容が多いのですか?

稲積 :翻訳会社にいたときには、サーバーとかストレージ、ハードウェア系の翻訳や校正の仕事が多かったんですが、今はそれにプラスして、セキュリティとか、場合によってはゲームなんかの翻訳もしています。
 同じメーカーの仕事でも、まったく違う分野の製品があるので、これこれが何割というような内訳は簡単には言えません。毎日来る案件の中身を確認して、自分にできるかどうか判断しています。

加賀山 :多種多様なんですね。翻訳はすべて英日ですか? 日英もありますか?

稲積 :すべて英日です。

加賀山 :媒体はマニュアルなどが多いのでしょうか?

稲積 :ユーザーマニュアルもありますし、お客様が社内で使うプレゼンテーションの資料とか、ユーザー向けのウェブページなどもありますね。

加賀山 :今は翻訳会社から受注されていますか? だいたい何社ぐらいと契約していますか?

稲積 :すべて翻訳会社からで、登録は5社、そのなかで定期的にお受けしているのは3社ですね。

加賀山 :ほぼ毎日埋まるくらい仕事が入ってきますか?

自宅兼仕事場周辺には、このような異人館が点在しています。

稲積 :そうですね。1日1800〜2000ワードは訳しています。納期は分量にもよりますが、1〜2日でひとつ仕上げるとか、そのくらいのペースです。じつは去年までは、1社だけから依頼されていました。一時期ちょっと仕事が減ったので、10年くらいまえに入って一度退会していたアメリアさんにもう一度入会して、契約が4社増えました。

加賀山 :アメリア経由でトライアルを受けられたんですね。すると、アメリアに入ってよかったことは、仕事が増えたことでしょうか?

稲積 :そうですね。求人が豊富で信頼できるということが、いちばんでした。時間があるときには、コラムや毎月届く冊子にも目を通します。今は3社からの仕事で手一杯なのですが、余裕ができたらまたトライアルも受けようと思っています。

加賀山 :プロフィールには、得意分野としてITのテクニカル、マーケティングと書かれています。ITのマーケティングというのは、どういうものでしょう?

稲積 :ざっくり言えば、お客様が製品を販売するときのプロモーション、プレゼンテーションの資料などですね。ユーザー向けなのか、社内向けなのか、一見わからないような資料もあります。

加賀山 :先ほどちらっとゲームの翻訳もされるとおっしゃいましたが、それはどのようなお仕事ですか? ITの翻訳とはまったく違いますか?

稲積 :基本的に違いはありません。最近ご依頼いただくようになってそれほど実績がないため、一概には言えないですが、ユーザーインターフェイスやプログラミングの手順など、ITに関連するものをお受けしています。普段お受けしている他の案件では目にしない用語なども多くありますが、こちらも基本的にお受けできる内容かどうか判断しています。

機械翻訳はますます優秀に

加賀山 :経歴についてうかがいます。大学の商学部を卒業されてから、数社を経てメーカーで携帯端末の仕様書作成業務をなさっていました。

稲積 :はい。勉強しながら派遣社員として勤めていました。基本は日本語の仕様書なんですが、海外端末の仕様書も作っていましたので、そのときには日英の翻訳をしていました。逆に向こうから仕様の要求も来ますので、それを英語から日本語にすることもありました。機種が変わるたびに、海外から「これを機能として入れてください」という要望が来るんですね。

加賀山 :商学部からITの分野に進まれたのは、何か理由があったんでしょうか?

稲積 :ITということをそれほど意識はしていませんでしたが、いずれ翻訳の仕事をしたいと思っていて、夜学に週1回通って勉強していました。派遣の勤め先がIT関連だったので、自然にこの世界に入りましたが、翻訳でも、この先長く続けるにはどの分野がいいかと考えて、ITを選びました。

このような宗教施設も数多くあり、異国情緒が漂っています。

加賀山 :そこで1年半働いたあと、翻訳会社に正社員として勤められたのですね。翻訳、校正、レビューなどの仕事をされました。レビューと校正はどう違うのですか?

稲積 :レビューというのは訳文のチェックですが、校正ではさらにITの技術的な部分もカバーして、機器の動作の確認などもしながら訳文を見ていきます。

加賀山 :翻訳会社にいらっしゃるときもITが専門だったのですね。案件に翻訳者を割り振るような仕事はなさらなかったのですか?

稲積 :はい。そういうコーディネーターの仕事はしませんでした。

加賀山 :その翻訳会社のあと、フリーランスになられました。

稲積 :翻訳会社ではおもにお客様に提出するまえの最終チェックをしていたのですが、いずれ翻訳でひとり立ちしようと考えていましたので、そこから独立といいますか、仕事をいただくかたちで在宅に変わりました。オンサイトから外注に変わったということですね。
 翻訳会社でしていた翻訳は、急ぎのものとか簡単なものに限られていて、数も多くありませんでした。やはり一から翻訳をしたいという思いがあって、フリーランスの翻訳者になったのです。

加賀山 :フリーになられて8年目、翻訳を始めて約20年になります。その間、何か印象に残っているようなお仕事はありますか?

稲積 :全体的な印象ですが、翻訳会社にいたころは、比較的時間をかけて翻訳や校正ができていたのですが、最近は機械翻訳などの流れで、スピード重視になってきているなと感じます。

加賀山 :同じ分量を訳すにしても、もっと速くやらなければいけなくなったのですね。機械翻訳の話が出たのでうかがいますが、ポストエディット(機械翻訳された訳文を人間の翻訳者が修正する)の仕事もされますか?

稲積 :はい。案件によっては、いったんかならず機械翻訳が入っているものもありますね。

加賀山 :機械翻訳は賢くなってきていますか?

稲積 :かなり賢くなっていると思います。昔は機械が訳した文章を全部消して一から訳したりしていましたが、最近は、簡単なものですと自分の翻訳とまったく同じになることもあります。データベースから引っ張ってきているのかもしれませんが、おそらくそういう翻訳メモリと機械翻訳を組み合わせているので、ちょっと怖いくらい優秀です(笑)。今のところ報酬の単価は下がっていないので、機械翻訳で助かっている面もありますけど。

加賀山 :機械が優秀になったことで手間が省けているわけですね。でも、単価が下がりはじめると問題ですね。

稲積 :そうですね。そこは考えておかないといけません。

社会情勢によって特定のトピックが増える

加賀山 :そもそも翻訳をしたいと思った理由は何ですか?

稲積 :中高生のころからずっと、なんとなく思っていました。英語が得意だったということもありますし、きれいな日本語に訳すことが、勉強ではなく楽しかったんですね。

加賀山 :そういう経験が積み重なったということですかね。やっているときにはわからなかったけど、あとで振り返ってみると楽しかったということではないでしょうか。
 今後進みたい分野や、やりたいことなどはありますか? 忙しいので当面は来ている仕事を一生懸命やるという感じでしょうか?

稲積 :あまり先のことまでは決めていませんが(笑)、去年、お取引できる会社も増えましたので、今後も余裕ができればトライアルなどを受けて広げていきたいです。

加賀山 :IT以外に分野を広げようというお考えは?

稲積 :あまりないですね。やはりITがからんでいるものをやっていきたいです。最初に働いた会社がたまたまIT関連だったのですが、そこで勉強しながら翻訳にも取り組んで、知識や翻訳のノウハウを蓄えることができたかなと思うので、今後もそれを活かしていきたいと思っています。

加賀山 :ふだん知識を仕入れるためにやっていることはありますか?

稲積 :仕事をしながら調べることがたくさんあるので、そこで勉強する感じです。ITはジャンルとして広いので、新しいもの、違うものがどんどん出てきます。最初は用語も仕組みもわからないことが多くて、毎日かなり調べないとできません。たとえばセキュリティひとつとっても、いろいろな技術が出てくるので、それぞれわからないと訳せないのです。

加賀山 :社会情勢の変化で、勉強しなければならないことが増えますか? たとえば、コロナ禍や戦争があると、仕事の内容が変わったりしますか?

稲積 :コロナの初期には、リモート技術に関するものがかなりたくさん出てきました。それにともなって通信もするので、セキュリティ関連の案件も増えました。外的な要因のあるなしはわかりませんけど、ある時期に特定のトピックが増えることはつねにあります。今ですと、AI(人工知能)とか。AIの仕組みに関する翻訳が増えている印象です。

加賀山 :日英翻訳をやろうとは思われませんか?

稲積 :それはないですね。日英できますかと訊かれることはありますが、基本的にお断りしています。文章として、やはり母国語のほうが、きっちりできるというか、きれいな日本語にすることにこだわりがあります。

加賀山 :これからIT分野の翻訳をしたいという方に、これをしておくといいですよというようなアドバイスがあれば?

稲積 :私の場合、仕事をしながら翻訳を学ぶ学校に行ったのと、経歴には書いていませんが、同じころフリーランスで少し翻訳の仕事もしていたんですね。そういう経験をいろいろしたことが役立っているので、何か機会があればやっておくといいと思います。仕事の応募でも「経験何年」というような条件がつくことが多いので。

加賀山 :よく実務翻訳の方がそうおっしゃいますね。そういう条件がよくつくんでしょうか?

稲積 :はい。そういう条件でかなり絞られます。それに、実務として受けないかぎり、翻訳ツールなどを使うきっかけもないと思います。ツールについては、ふつうお客様のほうから「これを使うように」という指定がありますから。チャンスをつかむことが大事ですね。

かなり坂を登ったところに家があり、会社に勤めていたときは通勤が大変でしたが、屋上に上がれば夜景を見てリラックスできます。

加賀山 :指定されるツールにはどのようなものがありますか?

稲積 :まずはTradosですね。ただ最近では、オンラインでお客様からライセンスをお借りしてウェブ上でやるものが増えています。お客様によっても違いますし、同じお客様でも案件によって別のツールを使うこともあります。私は常時3〜4種類使っています。実際の仕事にたずさわらないと、そういう経験がなかなかできませんよね。
 最初の一歩といいますか、この業界に入るところが少し難しいかなと思います。きっかけが必要なので、私はどの会社で働くときにも「翻訳をやりたい」ということは言っていました。やりはじめるとそうでもないんですが、昔のことを思い出すと、始めるきっかけがなかなか見つかりませんでした。

加賀山 :アメリアのようなところに入ってトライアルを受けるとか、そういう開拓方法になるんでしょうかね。

稲積 :トライアルを受ける場合でも経験が必要とされることがありますから、外注でも派遣でも、何かしておくといいんでしょうね。

加賀山 :いちばん初めの翻訳の仕事はどうやって見つけられたんですか? それは未経験でも可能だったとか?

稲積 :さきほど翻訳の学校に通っていたと申しましたが、そのときのクラスメイトの紹介がきっかけでした。その方もたしか翻訳は未経験だったのですが、未経験でも可能な会社で働くことになり、しばらくしてからその会社で在宅翻訳者を探しているのでやってみないかと連絡をいただいたんです。私もいつかは翻訳の仕事に就きたいと思っていましたし、経験を積めるチャンスだと思ってテストを受けたところ、運よく仕事をいただけるようになりました。
 最初は会社勤めをしながら、夜間や休日に在宅で仕事をしていたんですが、最終的にはその会社からお声がけいただいて転職することになり、(その後多少紆余曲折はありましたが)今に至っています。翻訳の学校に通ったこと、そしてそこでできたつながりが大きなきっかけになったんだと思います。

返信の早い翻訳者が歓迎される!

加賀山 :最後に、翻訳会社にお勤めだったということで、うかがいます。仕事を依頼したいのはどういう翻訳者ですか?(笑)

稲積 :基本的なことですが、仕事のお願いをしたあと、返信が早いといいですよね。翻訳会社としてはスケジュールを押さえたいので、早く返事をいただけると助かります。品質に関しては、まず仕様などの指示に確実に従っていて基本的なミスがないこと。あと、当たりまえですけど、納期を守ること。

加賀山 :うっ、最後が厳しい(笑)。

稲積 :ですので、自分としてはできるだけ早く提出するように心がけています(笑)。今は取引先と直接顔を合わさないことも増えているので、メールのやりとりですとか、気持ちよくできることが大切だと思います。

加賀山 :お得意さんというか、翻訳会社からよく頼む翻訳者というのは出てくるものですか?

稲積 :それはかならずあると思います。

加賀山 :この人に頼めば安心だ、みたいな。

稲積 :原稿が届いたあと翻訳会社内でチェックするわけですが、翻訳者によってその時間がかなり短縮されるので、そういう方に依頼することが増えていくと思います。

■最後のお話で、(ときどき)締め切りが守れない私はすでに失格だと思いました。反省。IT系の翻訳の仕事はこれからも伸びていきそうですね。いっそうのご活躍を!

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