カレッジコース修了生の田中翠さん | 【Amelia】在宅でできる英語などの翻訳の求人・仕事探しはアメリア

アメリア会員インタビュー

田中 翠さん

田中 翠さん

イギリス在住で映像翻訳を

プロフィール

2歳から15歳までをアメリカで過ごす。大学在学中にイギリスのオックスフォード大学に9ヶ月間留学し、英文学を勉強。大学卒業後はイベント会社勤務、フェロー・アカデミーのカレッジコースを経て、2022年よりフリーランスに転向。現在はイギリス在住。

日英の映像翻訳を中心に

加賀山 :今日はイギリスにお住まいの田中翠(たなか みどり)さんにお話をうかがいます。フェロー・アカデミーで私の出版基礎の講座を受けられたそうで、いまお顔を拝見して思い出しました(笑)。
 15歳まで10年間アメリカに住み、大学時代に9カ月間イギリスに留学されたということで、英語はネイティブレベル。まもなくイギリスで結婚されるそうですが、いまのところイギリスでは働けないそうですね?

田中 :そうなんです。4月にイギリスに引っ越してきて、現在は婚約者ビザで滞在しています。8月に結婚して配偶者ビザに切り替えると働くことが可能になります。ですので、この4カ月間は働けず、今後の働き口を探している状態です。いまはパートナーのお母様の家にいまして、これから住む場所も探さなければいけません。

サリー(Surrey)は自然豊かな地域で、週末にはハイキングを楽しみます!

加賀山 :そうでしたか。イギリスのどちらにいらっしゃるんですか?

田中 :サリー州といって、ロンドンの南、電車で1時間ぐらいのところです。

加賀山 :南というと、ケント州のあたりですか? 昔、友人を訪ねていったことがあります。

田中 :はい。ケントの隣です。すごく自然がいっぱいで、毎日キツネが庭に来て、追い払うのがたいへんです(笑)。母ギツネと子供たちが5匹ぐらいいて。

加賀山 :北海道のキタキツネみたいな感じでしょうか。すると、プロフィールの翻訳実績に書かれているのは、そちらに引っ越すまえになさった仕事ということですね?

田中 :はい。3月いっぱいまで日本で働いていましたので、その実績です。

加賀山 :現在に近いほうからいきますと、まずNHKワールド番組(50分)のCC(クローズドキャプション)作成。これは英語の番組ですか?

田中 :はい。英語の番組に英語のCC字幕をつけました。

加賀山 :次に、NHKワールド番組(20分)の英語台本の編集。これはCCではなく、内容を聞いて台本を作られたということでしょうか?

田中 :チェックといいますか、だいたい台本はできていましたが、抜けている場所とかがあったので、それを聞き取って台本に加え、もともと書いてあった英語については、正しいかどうかチェックしました。

加賀山 :それから、子供向け科学番組(15分)の日本語吹替と字幕。これは英日の翻訳ですね。ゴルフ関係のドキュメンタリー(55分)の英語原稿書き起こしもあります。これは台本編集に似たものでしょうか?

田中 :そうですね。

加賀山 :さらにNHKワールド番組(20分)の台本作成。NHKのお仕事が多いんですね。

田中 :はい。同じ翻訳会社さんからいただきました。

加賀山 :その会社には、いまビザの関係でちょっと仕事ができないんですと説明されているのですか?

田中 :はい。いま5社と契約していますが、この半年は引越しと今後の就職状況がわからないので、またご連絡しますとお伝えしています。

加賀山 :契約はあって仕事は休んでいる状態ですね。その5社からはだいたい均等に仕事が来ますか?

田中 :おもに来るのは3社です。そのうち1社は最初からずっと仕事をいただいていて、NHKワールドの番組や地上波のドラマなど、映像系の仕事は全部そこからです。
 もう1社は契約後、半年ぐらいあいてから初めて仕事をいただき、そのあとけっこう頻繁に依頼されるようになりました。金曜日の夕方に突然携帯にかかってきて、「これ月曜までにできますか?」って(笑)。こちらからは単発で24時間以内、48時間以内といった仕事が多いです。

加賀山 :そんなに納期が短いんですか。

田中 :そうですね。月曜までと言われた仕事は、日本の企業のウェブサイトの英訳でしたが、翻訳ソフトのPhraseを使ったので効率よくできて、それほど時間はかかりませんでした。その翻訳会社がPhraseのアカウントを持っていて、そこにログインすると仕事が入っているというやり方でした。
 最後の1社は、翻訳会社に就職されたカレッジコースの同期のかたの紹介で契約することができました。もちろん先にトライアルは受けました。そういった意味でも、横のつながりができるフェロー・アカデミーのカレッジコースに進んでよかったなと思います。

公開プロフィールが仕事に結びつく

加賀山 :次の実績は、企業ウェブサイトのニュース記事の日英校正。日本企業のサイトの英訳をチェックされたということですね。それから、アーティストの公演ウェブサイトの日英翻訳?

田中 :日本のアーティストが今年の夏にするライブのサイトの英訳でした。

加賀山 :日本のアーティストが日本でする公演ですか。その案内の英語版が必要だから訳されたと。オンラインマガジンや、観光ガイドマップの日英翻訳もあります。日英のお仕事が多いようですね。日英と英日の割合はどのくらいですか?

田中 :だいたい9対1で日英です。

加賀山 :なるほど。それから、地上波ドラマ(47分)のスポッティングと英語字幕。この「スポッティング」というのは……。

田中 :字幕をどこからどこまで入れるかということを、字幕作成ソフトで指定する仕事です。会社のほうから、何フレーム以上、何秒未満といった指示があって、その範囲で入れる場所を決めていきます。

チャールズ3世の戴冠式を祝うユニオンジャック、ロンドンにて。

加賀山 :字幕を訳すだけではなくて、ここからここまでというふうに指定するわけですか。字幕を訳す人とスポッティングをする人は同じですか? それとも別の人がやるのがふつうなんでしょうか?

田中 :会社によりますね。スポッティングがすんでいるものを渡されるときもあれば、スポッティングも頼まれて、報酬がその分少し高くなる場合もあります。スポッティングのルールが厳しい会社では、すでにスポッティングがしてあるものを渡されることが多いです。

加賀山 :そういうときにはスポッティングは触らないのですね。スポッティングを自分でやると、わりと字数が自由になるんですか?

田中 :ちょっと動かしたりはできますが、音が消えてから3フレーム以内に終わらせるとか、ルール自体が厳しいので、そう自由にやれるわけでもありません。
 私はけっこうスポッティングが好きです。ヘッドフォンをつけてずっと音を聞きながら数えていく単純さが(笑)。

加賀山 :それは、訳す以外の楽しみですね。ほかの実績として、ドキュメンタリー(70分)の日本語書き起こし台本作成もありますが、これは日本語のドキュメンタリーを日本語で台本にしたということですか?

田中 :はい。翻訳ではありません。

加賀山 :そういう仕事もあるんですね。それからこれは映像翻訳ではなくて、英語学習本のネイティブチェック。

田中 :ある出版社から、よく使う英語のフレーズ辞典のようなもののチェックを依頼されました。本当に日常的に使われるのか、実際どういう意味なのか、ということをネイティブチェックしてほしいと。パワーポイントのスライドみたいなのを100枚ぐらいチェックして、去年の12月に出版されると言われたんですが、たぶん没になってしまったと思います。

加賀山 :それは残念。報酬はもらえましたか?

田中 :はい。いただきました。

加賀山 :よかった(笑)。それから、地上波テレビドラマ(50分×2本)のスポッティングおよび英語吹替台本の作成と、地上波の子供向け科学番組の英語吹替台本作成。どちらも日英の仕事ですね?

田中 :そうです。その子供向け科学番組の仕事は2022年5月で、フェロー・アカデミーのカレッジコースを卒業したあとでした。ここからフリーランスの翻訳者としての仕事が始まりました。

加賀山 :最初は仕事をどうやって開拓されました?

田中 :アメリアの求人に応募してトライアルを受けました。映像関係の仕事はそこから初めていただきました。

加賀山 :アメリアが役立ちましたね。

田中 :出版社とのつながりもできましたし、最近ちょっと仕事少ないなと思ったら、アメリアをチェックして応募しています。

加賀山 :入会されたのはいつですか?

田中 :2020年に加賀山先生の出版基礎の授業を受けたんですが、アメリアに入会したのもそのときです。

加賀山 :そこから順調に仕事が入ってきていますよね。

田中 :アメリアのいいところは、プロフィールが自由にたくさん書けることです。プロフィールを見て連絡してくださった会社もありました。そこはトライアルを受けて不合格だったんですが……。実績がある程度たまってからスカウトのボタンをオンにしたら、わりとすぐに連絡が来ました。

加賀山 :プロフィールを公開することで先方から声がかかるというのはありがたいですよね。英日より日英のほうが翻訳者が少ないので、そこも好結果につながったのかもしれません。

田中 :たしかに、私が受けたカレッジコースには受講生が30人いましたが、みんな英日のほうが強くて、逆は少ない印象でした。

書き起こしに苦労することも

加賀山 :学習歴をうかがいます。出版基礎のあと1年間カレッジコースで学ばれました。カレッジコースは通学でしたか?

田中 :オンラインもありました。ちょうどコロナが始まった時期で。

加賀山 :そうでしたか。会社に勤めながらフェロー・アカデミーにかよわれたのでしょうか?

田中 :会社勤務は大学卒業後1年間でした。イベント会社に就職したんですけど、コロナが始まりまして、4月の入社後初めて出社したのが8月、そのあとも週に数日行くだけで、思い描いていた仕事の内容とはずいぶん変わってしまいました。それで、長期的にはここにいられないかもしれないなと考えて、翻訳を真剣に学びはじめました。大学卒業後、会社に1年、カレッジコースで1年、フリーランスになって1年という感じです。

加賀山 :そもそも翻訳が頭に浮かんだ理由は?

田中 :大学2年生から3年生のあいだにイギリスに留学をして、その夏休みに、ロンドンのペンギン・ランダムハウスという出版社で2週間だけインターンをする機会がありました。そのときには出版社で働きたいと思っていたのですが、海外の出版社で働いても、自分の日本人しての強みは活かせません。日本語を使いつつ海外とつながる仕事はないだろうかと考えていたら、そこの社員のかたから、翻訳なら本の内容に触れながらふたつの世界をつなげることができるよと言われました。
 そのとき初めて翻訳というものを意識しました。日本の大学に戻って受けてみた翻訳の授業もすごく楽しかったし、フェロー・アカデミーでの加賀山先生の出版基礎の授業もとても面白く、ますます翻訳に興味が湧きました。勤めたイベントの会社でも、展示会の出展者のマニュアルを英訳することがありまして、翻訳にたずさわっていました。

加賀山 :現役のチェッカーのかたからも講習を受けたそうですが?

田中 :カレッジコースを受講したときです。

加賀山 :カレッジコースでチェッカーについて学ぶ機会もあるんですね。カレッジコースは、出版、実務、映像を全般的にカバーしていますが、いちばん興味深かったのはどれですか?

田中 :やはり映像ですね。それまで映像翻訳をやれるとは思ってもみませんでしたが、実際にやってみて、ソフトの使い方や基本的なルールをしっかりと覚えればできるということがわかり、楽しくなりました。
 ドラマや映画を観るのはふだんから好きです。イギリスの時代劇とか、ラブコメディー、アメリカのリアリティー番組なども(笑)。

近所を散歩していると、農場で飼われている馬に出会うことがあります。

加賀山 :プロフィールには、「字幕制作ソフトBabelを使って学習」とありますが、これは一般的なソフトなんですか?

田中 :BabelよりSSTのほうが一般的かもしれません。私も受講後にSSTを購入しました。

加賀山 :「ボイスオーバーでは台本の作成方法、ドキュメンタリーならではの翻訳方法を学習」されました。「ドキュメンタリーならではの翻訳方法」とは?

田中 :ドキュメンタリーのナレーションは、ドラマや映画と比べるとゆっくりしゃべりますので、文字もたくさん入れられます。内容的にも、医療関係や生物学なら専門用語をたくさん入れなければならないので、字数を多少オーバーしてもいい、といったことですね。

加賀山 :なるほど。画面の人の口の動きに合わせる必要がないから、少し自由度が高くなるのですね。これまででとくに印象に残っているお仕事はありますか?

田中 :書き起こしがすごく難しいときがあります。内容は英語でも、話し手がどこの出身かによってアクセントが違いますし、とくに地名や人名はわかりにくいです。
 たとえば、英語原稿を作ったゴルフのドキュメンタリーでは、2022年のマスターズの映像を集めていましたが、選手の名前とかゴルフの単語がなかなか聞き取れないし、話す人のまわりからもいろんな声が聞こえてきて(笑)、苦労しました。

加賀山 :マスターズにはアメリカ人だけでなく世界中から選手が来ますからね。

田中 :そのたびにネット検索などで調べるので、55分の仕事がすごく長く感じられました。アメリカ人がナレーターのドキュメンタリーであれば、それほど苦労しません。
 でも、いちばん達成感があったのは、子供向け科学番組の日本語吹替と字幕です。吹替と字幕の両方ができたこともよかったですし、吹替台本を初めて作って、声優さんがそれを読んで、できあがった映像を見ることができて、感激しました。この仕事はロンドンの会社からの依頼でした。

加賀山 :そうでしたか。

田中 :海外の翻訳会社とも契約したいなと思って、アメリカとイギリスをいろいろ調べたんです。すると、日本と違って、トライアルを受けるというより経歴重視で、サイトに履歴書を登録して、何か仕事があれば連絡が来るという仕組みでした。これも登録してから3〜4カ月ほどたって、突然「こういう仕事に日本人の翻訳者が必要です。できますか?」というメールが来ました。

加賀山 :契約書も結びましたか?

田中 :はい。たくさん書類が来て契約しました。あと、観光ガイドマップの仕事は、新潟県の越後湯沢市でペンションをやっておられるかたが作った案内の英訳で、冬バージョンと夏バージョンがありました。

加賀山 :冬はスキー場ですからね。

田中 :居酒屋で出る郷土料理の説明なんかもあるんですけど、小さい枠のなかに英語でjizakeとか(笑)説明を入れなければいけなくて、難しかったです。レイアウトはだいたい決まっていましたが、自分でデザインソフトを使って、フォントを調整したりしました。いつもとは違う感じの翻訳で楽しかったです。

いつか出版翻訳も

天気が良い週末には電車で一時間移動し、海浜リゾートのブライトンに遊びに行きました。

加賀山 :今後のことですが、8月に結婚されてビザが切り替わったあと、翻訳の仕事を再開されますか?

田中 :じつはいまのところ、これまでみたいにおもに日本の翻訳会社から受注してフリーランスを続けるか、イギリスの翻訳会社で働くか、それともまったく違う仕事をするか、まだ決まっていません。

加賀山 :そちらの会社で働かれるにしても、ときどき翻訳の仕事はできますよね?

田中 :会社のルールにもよりますが、できると思います。

加賀山 :これまで映像翻訳が中心でしたが、ほかの分野もやってみたいというようなことはありますか?

田中 :いつか本を訳してみたいですね。出版基礎やカレッジコースを受講して、いかにたいへんかというのはわかったので、いますぐとはいわずに50代、60代でも訳せたらいいなと思っています。

加賀山 :出版翻訳でも、日英のほうが翻訳者は少ないので、チャンスはありそうですよね。

田中 :ぜひやってみたいです。こちらでも日本の小説は人気があります。ほとんど村上春樹さんですが(笑)、『コンビニ人間』(村田沙耶香著)の英訳なども書店で見かけました。

インタビュー公開後ほどなくして、田中さんから翻訳の仕事を再開した旨のご連絡をいただきました。
住む場所が変わっても続けられるのが翻訳の良いところですね。
田中さんの今後のご活躍をお祈りしています。(アメリア事務局)

■お久しぶりでした。イギリスでの新生活、楽しみですね。これからお勤めにしろ、フリーランスのままにしろ、なんらかのかたちで翻訳を続けられるといいのですが。趣味の旅行もたくさんなさってください。

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