アメリア会員インタビュー

毎日が締切との闘い!? 報道翻訳者の1日とは?

濱野 :法人や企業内での報道翻訳……というのがなかなか想像がつかないのですが、日々どのようなルーティーンで仕事をしているのでしょうか?

高取 :会社は24時間体制ですが、私の場合は朝8時〜午後4時半が定時です。土日祝日は基本的に休みですが、当番で出勤することもあります。出社するとまず、前日の退勤以降に配信されたニュースを隈なくチェックし、翻訳するかしないか、記事を仕分けしていきます。ここが、いちばんプレッシャーがかかるプロセスです。仕分けを自分でやり始めた頃は、間違えて重要なニュースを捨てていないか毎日不安でした。いったん記事を選り分けたあとは、速報すべき重要な記事があれば、すぐに翻訳して配信します。

濱野 :なるほど、まずはニュースの仕分けと、急ぎの記事の翻訳ということですね。そのあとは?

高取 :速報とは別途、平日の午後1時に定例のニュース配信があるので、前日の午後からその日の午前までに作成した記事を組み合わせてまとめ、正午過ぎぐらいに編集デスクに提出します。それが1日の最大の山で、午前を乗り切ってしまえば、追われているような感覚からは解放されますね。昼食をはさんで午後は、新たに配信された記事を仕分けして、重要ニュースがあれば速報して、その後は翌日に配信するための記事を翻訳します。

濱野 :一般的な実務翻訳とは異なる、報道翻訳ならではの特徴は何かありますか?

高取 :報道・ニュース翻訳の最大の特色は、編集作業が必要になることだと思います。不要なパラグラフやセンテンスを省いたり、順番を変えたり……リリースするニュースにはスペースに制限があるので、情報の取捨選択が重要です。

濱野 :単に翻訳するのではなく、記事を執筆するといったほうが近いでしょうか?

高取 :そういう要素もあります。ただ、「執筆」と言っても自分で好きに書いていいわけではなく、原文の情報・表現に即しつつ、重要な内容が伝わりやすくなるようにまとめるという具合です。必要であれば補足情報を入れますが、それが原文で提示された情報だと誤解されないように気をつけます。

濱野 :出来上がった記事については、内容や翻訳のチェックが入るのですか?

高取 :一人前になるとチェックなしでそのまま配信ということもありますが、私の場合はまだ編集デスクの最終チェックを受けています。

濱野 :勤めて5年目ということですが、入社時からすぐに翻訳者として仕事を?

高取 :はい。入社前にも多少の翻訳経験はありましたが、初めは先輩方から手取り足取り教えてもらいながら、という感じでした。ベトナム、ラオス、カンボジアの主担当者になって記事の選別まで任せられるようになったのは、入社して1年半くらい経ってからのことです。

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