アメリア会員インタビュー

時の流れに身を任せながら 強い意志で「翻訳者」という目標に向かう

濱野 :決して急がず、力まず、しかし学習は続けながら、しっかりと目標に向かって進んでいるようですね。

高取 :のんきな性格で深く考えているわけではないのですが、なぜかいい方向に進んでいるな、と自分でも思います。結局、学習を始めてから、翻訳でお金をもらうまでに7年近くかかりましたが……。ただ、塾講師の仕事も、翻訳コーディネーターのアシスタントの仕事も、自分では楽しみながらやっていたんです。翻訳者になれなかったとしても、このまま続けてもいいと思える仕事でした。そういう意味では、翻訳者になるために苦しい思いをした、という感じはまったくありません。

濱野 :自然体で流れに身を任せる感じ、いいですね。現在は晴れて翻訳者デビューして活躍されているわけですが、翻訳力を向上させるために実践していることや、お仕事で特に心がけていることは何かありますか?

高取 :そうですね……入社当時から、毎月何かしらテーマを決めて、重点的に見直すようにはしています。たとえば、「今月は見出しには赤が入らないように注意しよう」とか、「来月はandの訳し方に気をつけよう」とか。

濱野 :さきほどのTOEICの点数の話もそうでしたが、自分で課題を設定し、それをクリアしてから次に進むというポリシーを徹底されていますよね?

高取 :サッカー部の名残ですかね(笑)? サッカー部のときには、チームのテーマだけでなく、個人のテーマを持って全体練習や個人練習に取り組みなさいと何度も言われました。それが、いまの仕事で役立っているのかもしれません。

濱野 :サッカー部の練習に学ぶ翻訳術……なんだか本になりそうです(笑)。ほかにも、何か取り組んでいることは?

高取 :うーん……いちばん意識しているのは、とにかく速く訳すことでしょうか。入社当時は3回訳を見直していましたが、その後1回に減らして……実はいまは、原文との突き合せのチェックは時間がかかるのでしていません。その分、訳抜けや文意の取り違えには訳出の段階で注意します。

濱野 :ええ? 提出前に、突き合せをしないということですか?

高取 :はい。「翻訳スピード向上月間」をつくったときに試してみたら、突き合わせをしないという前提で訳すほうが上手くいくことが多かったんです。それ以降、このやり方が定着しました。もちろん、編集デスクにチェックしてもらえる、という環境に甘えているだけかもしれませんが。ただ、突き合わせをやめてからも赤字の量はそれほど増えませんでしたし、いまでは2、3回見直していた頃よりかなり少なくなりました。〈ラヂオプレス〉の理事長にも、「見直しなしで人に発表できるレベルの訳をしろ」と言われています。ただ、いまのやり方にしてしばらく経つので、今度は「セルフチェック強化月間」を定めて見直しを増やしたら、いろいろと気づくことがあるかなと考えています。

関連する会員インタビュー
実務翻訳