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坂田:出版翻訳家としてのデビューのキッカケを教えてください。 片山:フェロー・アカデミーに通学しているあいだ、ある翻訳学習誌の訳文投稿コーナーに毎月投稿していたんです。 これがきっかけで、そのコーナーの執筆を担当されていた伏見先生が個人事務所で開いている勉強会に参加させていただくようになりました。 そのころから、先生の紹介でリーディングや下訳のお仕事がずいぶん増えてきました。 この勉強会の参加者は強者ぞろいで、すでに何冊も訳書がでている方も多く、とても刺激的な勉強会だったんですよ。みなさんがすばらしい訳文を提出されるので、少しでもその技を盗ませていただこうと、毎回必死でした。 わたしが翻訳デビューすることになったのも、こうした優秀な先輩がおつきあいされていた出版社(主婦の友社)に、リーダーとして紹介していただいたのがきっかけです。3冊くらいリーディングのお仕事をいただいたあとで、1冊翻訳させていただけることになりました。 坂田:うかがっていると、デビューまで非常にスムーズに走り抜けたという印象を受けるのですが……。 片山:そうですね。挫折というほどつらい思いをしたことはありませんが、自分にはプロになる素質がないんじゃないかと思ったことは何度もあります。 トライアルやコンテストにも何度か応募したのですが、まったく箸にも棒にもかからない状態だったものですから。ところが、今は1週間仕事がないということが滅多にない状態になっています。 はじめて下訳をしたのが1998年の夏で、デビュー作になる本の依頼がきたのは2001年秋ですから、自分でもこのスピードに驚いているんですよ。 坂田:素晴らしいですね! でも、ご自分でもかなりの努力をされたのではないですか? 片山:この間にたくさん本を読んだり、@niftyの会議室に読後感を書き込んだり、どんな急ぎのリーディングも徹夜してでも仕上げたり、わたしなりに努力をはしました。でも、こうしたことはプロになられた方なら、どなたでもやっていらっしゃることだと思うんです。 ただ、ひとつ言えることは、わたしはとてもひとの縁に恵まれていたということです。大勢の翻訳家や編集者にお会いする機会が多く、その人脈のなかでいただけた仕事が多かったんですね。 そういうコネクションをつくるには、やはり毎日のちっちゃな努力の積み重ねが役立ったのかなぁ、と今あらためて思っています。 坂田:自分にはプロになる素質がないのではと思われたということですが、逆に、プロの翻訳家として自覚が持てた瞬間というのはありますか? 片山:今年はデビュー作を含め、3冊の訳書が出る予定ですが、プロといわれるとまだこそばゆい気がします。今は「これに失敗したら次はない」というつもりで、ひとつひとつの仕事に全力で取り組んでいます。 ただ、プロとしてやっていくための根性だけはあるかなぁ、と思っています。 納期のきつい仕事をしているときに体調をくずしたりして、「もうぜったいに締め切りに間に合わない!」と思ったことも何度かありますが、それが意外と間に合っちゃうんですよね。火事場のナントカといいますが(笑)。そういう根性はありますね。 それと、先輩翻訳家の下訳をしたときに、調査能力を褒めていただいたことがありました。このときは「ひょっとしたら、プロになるための能力(の一部)は備わっているかも」と思ったことがあります。なんとも厚かましい話ですが。 坂田:調査能力ですか。調べるって難しいですよね。わたしなんか、どこから調べればいいのか、見当がつかないこともしょっちゅうです。よろしければ『片山流調査のコツ』を教えてください。 片山:『片山流』というほどすばらしいものはありませんが(笑)。 未知の分野を訳すときは、まず関連する分野の本を何冊か読みます。講談社や岩波の新書を読むことが多いですね。巻末に参考文献が載っていることもあるので、そこから読む本を探すこともあります。 意外に役立つのは、岩波ジュニア新書など、子ども向けの本です。易しい文章で書かれた本でその分野の全体像をおおまかにつかんだら、細かい部分を理解する助けになります。自分がどこまでわかっていて、何がわかっていないのかが見えてくるんです。こうなると調べものも楽になりますよね。 そのほか、原文中の個々の調べものは、手持ちの辞書、参考文献、インターネットで検索し、なるべく複数の資料で確認するようにしています。 図書館にも行きますが、今はだいぶ手持ちの資料が増えてきたので、近所の公立図書館より自分の本棚のほうが新しい資料がそろっていたりすることも。 そのほか、特定の分野に詳しい知りあいに尋ねることもあります。数カ国語に堪能な友人とか、英語に強い医者の知人などには、始終お世話になっています。 坂田:インターネットなども利用しますか。 片山:もちろんです。いろんなホームページを検索して、サイト管理者に「××について調べています。○○まではわかりましたが、ほかの部分がよくわからず……」といったふうに問い合わせメールを出すこともありますね。ぜんぶ教えてもらおうと思わずに、できる範囲で自分で調べてから、どうしてもわからないところがあるので教えてください、という姿勢で問い合わせれば、役に立つアドバイスをいただけることも多いですよ。 インターネットの検索サイトのなかでは、"Alta Vista"をよく使います。聖書の一節とか、歴史上の人物の演説の一部、辞書にないイディオムなどをそのまま検索窓に打ちこむだけで、かなりの確率で意味や出典がわかります。そこからほしい情報の糸口をつかむことが多いですね。 今まで一番困った調べものは、あるミステリに出てきた太極拳にかかわる部分です。図書館で太極拳の本に何冊もあたりましたが、お手上げ状態でした。ところが、@niftyの武道関係のフォーラムで質問してみたら、親切なかたがいらっしゃって、とてもわかりやすく説明していただけました。