アメリア会員インタビュー



子育てという新規分野の開拓に今は夢中

坂田:自然といい流れでお子さんを授かったのですね。

宮田:ちょうどそのときは、久しぶりにロマンス小説の翻訳をしていたので、ホルモンの分泌がよくなっていたのかもしれません(笑)。妊娠初期で体調がすぐれず、編集者さんに「実は……」とお話ししたら、身体が大事だから無理をしないでください、と納期を延ばしてくださいました。それまでは妊娠や子育てで仕事ができなくなるのが不安だったんです。会社なら産休もあるけど、フリーランスは仕事を断るしかありませんから。でも、大きなブレークスルーを経験した後だったからか、あまり焦らずに、体調をみながら少しずつ取り組めました。このロマンスの仕事を納品したら、子どもが産まれるまではお休みしようと思っていたのですが、今度は別の出版社から天使の本の翻訳を頼まれました。もともとスピリチュアル系の本が好きで、天使も大好きなので、断りたくない!と思ってしまって。ずうずうしくも事情を説明して、でも「どうしても訳したい」とお返事したら、「ぜひ訳してください!」と納期を長めに設定してくださいました。これはもう、楽しく取り組みましたね。子どもがおなかをトントンと蹴るのを感じながら。妊娠8カ月のときに納品を終え、ロマンス天使の本のゲラの校正を済ませたところで臨月に入り、昨年の8月に無事男の子を出産しました。

坂田:お子さんができ、その後お仕事はどのようにされているのですか?

宮田:つい先日、私が訳した『生きものびっくり生態図鑑』という子ども向けの本が、文溪堂さんから出版されました。この本の訳文は2年ほど前に納品していたのですが、監修の先生方のご都合で出版が延び延びになっていて、今年のゴールデンウィーク直前に突然ゲラが届きました。これが産後の初仕事ですね。
  出産前は、産後できるだけ早い時期に仕事に復帰したいなと思い、ベビーシッターの派遣会社をチェックしたりしていました。でもいざ子どもが産まれてみると、自分でも信じられないくらい“親ばか”になってしまって。実際に手はかかるし、かわいい赤ちゃんの時期は今しかないから一緒にいたいなという思いも強くて。出版社さんからは、産休があけたらお知らせください、と言われていて、ちょうど1年経った今年の8月に翻訳の仕事を打診されたりもしたのですが、残念ながらお断りしてしまいました。子どもが歩けるようになって、ますます目が離せなくなり、とても仕事に集中して取り組めそうにないので。出産したときは1年後にぼちぼち仕事復帰かなと考えていましたが、今は2年ほどゆっくりして、そのうち自然に仕事に復帰できるかなと思っています。

坂田:子育ての経験もいつか翻訳に生かせるかもしれませんよね。

宮田:そうですね。子どもができたことで、いつか児童文学の翻訳にもチャレンジしてみたいな、と思うようになりました。独特の分野なので、すぐに仕事にできるとは思っていませんが、自分が好きな絵本なんかを子どものために訳して読み聞かせしてあげても楽しいでしょうし。以前、ライターの仕事でこだまともこ先生のクラスを取材したことがあって、とても楽しそうな授業だったので、いつか受講してみたいなと思っています。翻訳の仕事のすごいところは、社会経験がすべて仕事に生きてくるところですよね。子どもは以前は興味のないことがらだったんですが、今は新規分野を開拓する気持ちで子育てを楽しんでいます。ずっと母乳で育てているのですが、子どもがおっぱいを吸っている姿を見ながら、「ああ、やっぱり私もほ乳類なんだ!」と思ったりして、面白がっていますよ。私自身も子どもに育てられていますしね。ぐずったときに、ついイライラして大声を上げてしまうと、それを子どもが察知するのか、ぴたっと泣き止んだりして。自分の未熟な面を子どもに教えられている気がします。

翻訳に関しては、いつか仕事に完全復帰したら、やはり好きな動物もの、それから環境やエコロジーものも手がけてみたいので、アピールしていきたいです。もちろん、それ以外の分野も何でもやりますよ!

坂田:そうですね。頑張れば何でもできる!ですよね。今日はどうもありがとうございました。

やりたいことをやり続けるためには、2日続きの徹夜だって苦にならない、と聞くとどんな強い女かと思うかもしれませんが、実際にお会いした宮田さんは、とてもしなやかな女性でした。あまりに硬すぎるとポキリと折れてしまう、竹のようにしなるのが本当の強さなんですね。女は母になると強くなると言いますから、宮田さんの進化は今後も止まらないでしょう!! 子育ても翻訳も一生の仕事として頑張ってください!

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