アメリア会員インタビュー




山内あゆ子さん

第41回
学生時代に夢見た舞台台本の翻訳 十数年来の思いを実らせ 好きな仕事を続けています
  山内あゆ子さん
Ayuko Yamanouchi


「台本の翻訳家になりたい!」「食えないからやめなさい」


坂田
:今回は舞台の台本を翻訳なさっているという山内あゆ子さんにお越しいただきました。山内さんは台本の翻訳だけでなく、舞台の企画のお仕事にも関わっていらっしゃるんですよね。海外の戯曲が日本で上演されるまでにはどのような過程があるのか、ぜひ教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

山内:こんにちは。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

坂田:台本の翻訳というと、どのようなルートでお仕事をするようになるのか私も全くわからないのですが、山内さんはいつ頃、どんなきっかけでこのお仕事をするようになったのですか?

山内:私が台本の翻訳を始めたのは大学生の頃なんです。英語劇のサークルに所属していたのですが、英語で芝居をすると、ウケないんですよね(笑)。英語なので内容がよくわからない、だから面白い場面なのに笑ってもらえない。じゃあ外国の作品を日本語でやればいいだろうと思ったら、日本語の台本がなかった。だったら自分で訳せばいいじゃないかって、勝手に台本を訳しはじめたんです。

坂田:では、最初はお仕事ではなくて、趣味のようなものだった。

山内
:そうですね。ところがラッキーなことに、そのサークルの面倒を見てくださっていた先生がたまたま演劇業界とつながりのある方で、私が翻訳した台本を読んで「下訳や上演検討の資料としてなら使えるんじゃないか」とおっしゃってくださって、知り合いの劇団の方に渡してくれたんです。

坂田:上演検討の資料というと? 劇団やプロダクションの方が、山内さんが訳した台本を読んで、この作品を日本で上演するかどうか決めるということですか。

山内
:そうです。一番最初に読んでもらった台本は、検討されたけど採用はされなかったんですけどね。でも、その後もずっと、私が訳したものを劇団に持って行ってくださっていたんです。そうしているうちに就職活動をしなければいけない時期になったのですが、その頃はもう芝居の翻訳者になりたくて、なりたくて……。

坂田:それで、どうなさったのですか?

山内:劇書房という演劇の台本や評論などを専門に出している出版社があるんです。学生時代、私は劇書房の本が好きで愛読していました。それで、手紙を書いたんです。“あこがれの翻訳者がいて、あこがれの台本があって、そういうものを翻訳する人になりたいのですが、どうすればいいですか?”って。

坂田:その出版社に知っている人がいたわけではなく、一読者だったんですよね。返事は来ましたか?

山内
:はい、出版社の方からハガキが届きました。“食えないからやめなさい。普通に就職しなさい”って。でも、“のぞいてみるだけなら遊びに来なさい”とも書いてあって。で、真に受けて遊びに行きました! それから、チラシの折り込み作業やシール貼りなんかの雑用を手伝うようになって、すごく楽しかったです。もちろん報酬はなし。ときどき、ご馳走してもらいました(笑)。

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