アメリア会員インタビュー


お仕事ってこういうご縁でくるんだな、と実感しました」

岡田:『イチロー』のほかにも、『完璧ゴルフクラブの選び方(日刊スポーツ出版社)』、女性プロゴルファーのミステリー『プロゴルファー リーの事件スコア』シリーズ(集英社)もありますね。スポーツはお得意なんですか?

寺尾:いえ、中学高校のソフトボールだけです。実はゴルフもやらないんです。ゴルフクラブの本に関しては、ずっと以前、リーディングでゴルフの小説を扱ったとき、うまく仕上がっていたのをエージェントの方が覚えていてくださったのがきっかけでした。その後のゴルフミステリーシリーズもそのご縁です。「お仕事ってこういうご縁でくるんだな」と実感しましたね。

岡田:このゴルフミステリーシリーズは全5編なんですね。1月刊行は『悲劇のクラブ』。これで完結ですか。子どもが巣立つようで、ちょっと寂しいですね。

寺尾 :そうですね。あっと言う間でしたけど。

岡田この5冊をどのくらいの期間で終えられたんですか?

寺尾 :約1年半かけて全巻刊行でした。一冊一冊は薄い本なので、正味2ヶ月くらいで訳了しますけど、他にもいろいろ重なりますからね。

岡田:日頃、編集者さんとのコミュニケーションはどのようなことを心がけていますか?

寺尾 :メールのやり取りが中心になるので、なるべく早く返信することは心がけています。あとはどんなお仕事も同じですが、相手に迷惑をかけないことを心がけています。できるだけ相手の立場にたち、「仕事がやりやすい」と思っていただけるように気をつけていますね。それから、急な仕事など、相手がお困りのときにはこちらもできるだけ協力するなど、ふだんの信頼関係も大切ですよね。

岡田:なるほど。では翻訳をするときに心がけてらっしゃることはどんなことですか?

寺尾 :私は出版翻訳メインで、これまでにロマンス、ミステリー、ノンフィクションなどを訳しましたが、ジャンル別に重視するポイントが違いますね。ロマンスは必ずハッピーエンドですから、読後に「楽しかった、ステキだった」と実感できることが大事だと思うんです。エンターテイメントとして、読者の期待に寄り添える表現にしたいですね。ミステリーだったら謎解きの楽しさ、ロマンスだったらうっとりする感じ、ノンフィクションだったら正確さなど、それぞれ重視するポイントをきちんと押さえて訳すことが大切だと思っています。

岡田:ロマンスはロマンチックな言葉選びにも気をつかいそうですね。

寺尾 :そうですね。普段の生活がロマンスとかけ離れているせいか、以前はゲラに赤字で「このシーンもっと艶っぽく」なんて入っていたこともありました(笑)。これはマズイ、艶っぽさも研究しないと……と「性語辞典」を買って勉強しようとしたんですけど、編集者さんに話したら、「そういうのは男性向きでストレートなのが多いから、それもちょっとね」って(笑)。今は慣れましたが、ロマンスで大事なのはやっぱりロマンチックであること。夢を与えるものですから。編集者さんにはゲラに赤を入れていただいたり、感想を言っていただいたり、よくご指導いただきました。あとは上手な訳書を紹介していただいて、それを読むこともしましたね。

岡田:どんなジャンルでも、努力と研究は欠かせないんですね。

関連する会員インタビュー
出版翻訳