アメリア会員インタビュー


「チャンスはどこからやってくるかわかりません。すぐ身の回りにあるかもしれませんよ」

岡田:今後、プロを目指す方たちに、寺尾さんからアドバイスやメッセージをいただけますか?

寺尾 :出版不況といわれて久しいですが、確かに経済的な意味ではますます厳しい状況になっています。それでも、わたしがこの仕事を続けているのは、やはり「翻訳が好き」だからです。「好き」だけで仕事は続けられませんが、その気持ちに支えられているのは間違いありません。逆に言えば、好きでなければ続かない仕事ですから。みなさんがもし「翻訳が好き」だと思えるようでしたら、この仕事はとてもやりがいのあるものですし、いま勉強されていることは必ず役に立ちますよ。ただ、漫然と学習するだけでなく、現実的に仕事を得る方法にも少しずつ目を向けたほうがいいと思います。

岡田:なるほど。ただ待つだけでなく、積極的にアクションを起こした方がいいんですね。

寺尾:そうですね。今はネットも普及して、アメリアのようなネットワークに登録すればお仕事のチャンスも広がりますよね。それをどんどん生かされるといいと思います。私のころは実力をつけて先生に認められて、下訳をこなして編集者に紹介していただくという時代でした。今の方はトライアルなどで成果を残せますし、リーディングや勉強会もたくさんある。翻訳者が開くセミナーに出たり、読書会に出たりして、少しずつ翻訳出版界をのぞいてみるのもいいでしょう。すぐに仕事につながる方法はなかなか見つからないかもしれませんが、「少しずつ」近づく努力をすれば、道は開けてくる気がします。チャンスはどこからやってくるかわかりません。すぐ身の回りにあるかもしれませんよ。

岡田:貴重なお言葉ですね。身にしみます。最後に、今後どんな翻訳を目指していらっしゃるかお聞かせください。

寺尾:私は最初はノンフィクションの翻訳がメインだったのですが、フィクションを訳せるようになったのをとてもうれしく思っています。ロマンス小説の翻訳も経験し、ミステリーも5冊訳しましたが、今後はジャンル小説だけでなく普通小説なども訳してみたいですね。デビューしてから10年ちょっと。今まではいただいたお仕事や依頼をとにかく「一生懸命がんばる」という感じだったんですが、これからは自分でも面白い本を探して、持ち込みを増やし、自分からも発信していけたらと思います。好きなことですから、これからも楽しんで訳していきたいと思っています。

岡田:これからもたくさんの素敵な書籍を期待しています。今日は本当にありがとうございました。

■訳書が30冊を超える人気翻訳家の寺尾まち子さん。多忙な毎日にも関わらず、とても元気で優しいお人柄がうかがえました。ロマンス、ミステリー、ノンフィクションと多岐にわたるジャンルをこなすバイタリティーは、修業時代に培われた実力の裏付けですね。これからもたくさんの素敵な訳書を楽しみにしています!

関連する会員インタビュー
出版翻訳