アメリア会員インタビュー



翻訳スピードを学習中から把握して、スケジュール管理に生かす

坂田:その後も、さらに取引先を増やしましたか?

渡部:はい。翻訳学校では字幕も吹替も習ったのですが、最初の頃の仕事はすべて字幕でした。翻訳仲間と「これからの時代は吹替だよね」と話して、仕事のチャンスを広げるために、友人が見つけてきた翻訳会社が主催する吹替講座に参加したんです。1回のみの講習でしたが、参加者のうち既に仕事をしているのは私たちだけで、翻訳しませんかと声をかけられて。仕事は吹替ではなく字幕だったのですが、CS番組のリアリティーショーの仕事をいただくようになり、その後何シリーズかドラマを担当させていただきました。

坂田:取引先が複数になると、スケジュール管理が大変ではないですか?

渡部:そうですね、大変でした。最初、1社の仕事しかしていなかったのも、それが理由のひとつです。複数の仕事をこなすのは、まだ無理だと思って……。でも、仕事を断ってしまうと、次からは声が掛からないかもしれないと思うようになり、多少無理をしてもスケジュールにめいっぱい入れるようになりました。翻訳に慣れるためにも、多少無理をしても今は仕事の数をこなす時期だと思いました。

坂田:いちばん忙しかった経験は?

渡部:初めてドラマの「吹替」の仕事をいただいたときでした。既に2本の仕事を抱えていたのですが、望んでいた吹替だったので、絶対にやりたいと思い、無理して引き受けました。予備日はなかったので、とにかく1日にこなすべき量を割り出して、朝から晩まで仕事をしました。平均睡眠時間が5時間くらいの日々が1カ月くらい続きました。

坂田:でも、ずっとこの忙しさでは体が持ちませんね。

渡部:そうですね。経験を積むべき初期の頃には、このように無理をしても仕事をこなす時期が必要ではないかと思います。しかし、ずっと同じペースでは疲弊してしまいますよね。私も、最近は単価を上げる努力をして、少し余裕を持って仕事をし、そのぶん質を上げることに注力しています。

坂田:単価を上げる、というのが難しいことだと思いますが。

渡部:同じクライアントで単価を上げるのは難しいですよね。最初は翻訳会社との取り引きから始める方が多いと思います。私もそうでしたが、徐々にその先の制作会社から直に取り引きできるように意識してきました。直接、履歴書を送ったり、アメリアの「JOB」で制作会社からの翻訳者募集があれば、積極的に応募するようにしていました。結果、いまでは半分以上が制作会社から直接いただく仕事になっています。制作サイドとの距離がより近づくことで、相手の求めていることもよくわかり、勉強になります。

坂田:仕事が複数重なったとき、依頼を受けるか断るかは、どのように判断していますか?

渡部:現在の自分の実力で、どのくらいの仕事をこなすことができるか、常に把握しておくようにしています。字幕か吹替か、ドラマかドキュメンタリーかで違ってくるので、それぞれで把握しておく必要があります。例えば、ドラマの字幕なら1日に翻訳できる量は私の場合20分です。睡眠時間を削れば、あと5分プラスしてマックス25分くらいまではできるでしょう。ドキュメンタリーだったら調べものが多いので15分くらいです。学習中から、自分がどのくらいのスピードで翻訳できるのか常に測りなさい、と言われていたので、課題をするときもどのくらいかかるか測るようにしていました。大事なことだと思います。

スケジュール管理には、表計算シートを使っています。縦に日付、横に取引先名を書き入れて、仕事が入ると1日に翻訳する量を書き込むんです。例えば、A社から1本正味40分のドラマの字幕の依頼があったら、1日10分で4日間分の欄を埋めます。その後、B社からも同じような依頼が入れば、スケジュール表で余力を確認しながら仕事を受けられるか判断して、同じように1日に訳す量を書き込みます。急ぎの仕事が入ってきたら、マックスの量まで広げれば入れられるのか、あるいは他社さんの分で締め切りに余裕があるものを後ろにずらせるか検討して、お返事するようにしています。

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