
岡田:山村さんは大学は理系で、すでにその頃には英語のしっかりとした基礎があったということですが、帰国子女など英語のバックグラウンドが? 英語スクールだけでは難しいような……。
山村
:いえ、帰国子女ではありません。兄が中学校で英語を始めた影響で英語に興味を持ち、親に頼んで小学校3年生頃から英語スクールに通いはじめました。英会話学校と英語塾の中間のようなスクールで、熱心な先生に文法や発音など、満遍なく基礎を固めていただきました。
岡田:とおっしゃると、基礎の英語は学校とそのスクールのみですか?
山村
:そうです。熱心な先生でしたから、スピーチコンテストや英検の時期にはほぼ毎日、時には先生のご自宅まで通って練習をしました。子供心にキツく感じたこともありますが、今となってはその経験に大変感謝していますね。
岡田:それはそれは……。子ども時代に熱心に学んでいたことが、今こうして翻訳家として実ったんですね。そのスクールにはいつ頃まで通われたんですか?
山村
:スクール通いは高校2年生になるまで続けました。
岡田:翻訳学校に通ったご経験は?
山村
:特にありません。フェローの単発の講座やトライアル、翻訳お料理番などにはよく応募していますが、これといって翻訳の勉強をしたわけではなく、英語スクールと大学の頃の専攻、それに趣味を生かしたオンザジョブトレーニングですね。その分、毎日が勉強という感じです。
岡田:多くの方がプロへのデビューまでに長い道のりを歩まれるなか、実に珍しいケースですね。
山村
:本当にいろいろと恵まれていたんだと思います。
岡田:大学でのテクニカルなこと以外にもこれまで役立ったことはありますか?
山村
:読書やそれ以外の趣味だと思います。専攻こそ理系の大学ではありますが、もともと文系科目のほうが成績はよかったかも。子どもの頃から父の書庫を荒らして、いろいろな本を読んでいました。
岡田:それは確かに知識の集約につながりますね。たとえばどんな本を?
山村
:父がいわゆる「書痴」のような人で、とにかくいろいろな書籍を持っていましたから、いろいろな全集からちょっとした詩集まで興味のあったものはなんでも読みましたね。英語スクールでマザーグースを習えば、英文学の棚を荒らしてみたり、テレビゲームで遊んだあとには神話やファンタジー作品を読んでみたり……子供の私には難し過ぎるものもたくさんありましたが。英語以外の知識のベースは実家の本棚からです(笑)。
岡田:お父様の影響もずいぶんあるんですね。ご両親は教育熱心でいらっしゃったんですか?
山村
:両親にああしろこうしろと厳しく言われたことはないので、特に熱心ということではなかったと思います。でもかなり影響は受けていますし、教育的環境にも恵まれていたと思います。近くに図書館もあったので、そこでただ本を眺めることもあったし、調べ癖のようなものもありましたね。
岡田:小さい頃からとても知的好奇心が旺盛なんですね。
山村
:ただの「凝り性」かもしれませんが(笑)。でも特にゲーム案件をやっていると思うんですが、ある日突然、知っていることが仕事につながることがありますね。興味を持って追求したことが何かの役に立つことがある。特に今はどんなテーマがゲームになってもおかしくない時代。そう思うと無駄になることは何もないように思います。
岡田:やはり翻訳者に旺盛な好奇心は大切ですね。蓄積された知識が必ずなにかの役に立つんですね。ご趣味の方は?
山村
:読書以外の趣味ですと、これも子供の頃から細く長く続いているんですが、ざっくりと言うと音楽とフィットネスですね。小学生の頃に吹奏楽部に入ったり、水泳を習っていたりしたのが最初で……それ以降もいろいろと形を変えて今まで続いています。お話し始めると長いのでまたの機会にしますが(笑)、こういうのもいつか何かにつながるかも、なんて思って割と真面目にやっています。あとはガーデニングとか爬虫類とか。ベランダで育てているバラがどんどん芽吹いて、もうすぐ盛りです。