アメリア会員インタビュー


出版翻訳を経験して身についた翻訳体力。 「翻訳トライアスロン」受賞を機に映像翻訳の道へ

岡田 :産後2か月で初めての出版翻訳は、なかなか厳しい状況だったことと思いますが……。

今井 :そうですね、夜中に仕事をしていました。やはり1冊訳すとなると相当な量で……。学校では1週間で5ページくらいしか進まないのに、仕事となると1日5ページやらなきゃいけない。それがとてもたいへんだったけれど、おかげでフェローのクラスで先生がおっしゃっていた「翻訳体力」というのがつきました。それが後に受けたアメリアの「翻訳トライアスロン」でもいかされたようで、映像部門賞をいただき、トライアル付きセミナーに参加するチャンスを得ました。幸運にもトライアルに合格し、制作会社からドキュメンタリーのお仕事をいただけるようになりました。これが32歳の時です。

岡田 :なるほど、やはり翻訳はすればするほど「体力」がついていくものなんですね。ドキュメンタリーでは『ディスカバリーチャンネル』や『アニマルプラネット』といった、まさに王道のドキュメンタリー番組を担当されています。ドキュメンタリーの字幕翻訳はどれくらいの時間で仕上げるのですか?

今井 :1時間番組なら、私の場合はだいたい8〜9日間ほどですね。

岡田 :その間はどのような生活を?

今井 :まずはネットで検索をかけて、図書館の資料から参考書籍の目星をつけ、上限いっぱい借りてきます。ネットの情報よりも書籍のほうが参考資料としての信頼性が高いので、時間の許す限り書籍で裏をとるようにしています。私の場合、ざっと最後まで訳してから資料に目を通して確認や手直しをし、原稿と一緒に、使用した参考資料のリストも提出します。先に情報があると思い込みにはまることがあるので、ある程度訳して内容を理解してから裏をとる、といった感じです。

岡田 :分野としては、自然系が多そうなイメージがありますが……。

今井 :必ずしも自然系とは限りません。つい最近やったのは「戦車」ですから(笑)。苦手意識のあるテーマでも、やってみるとおもしろいんです。割と最近、悪魔祓い師、いわゆる「エクソシスト」の話も訳しました。

岡田 :ホントにいろいろなテーマがあるんですね。調べ物のご苦労が忍ばれます。今井さんはドキュメンタリーだけでなく、ドラマの翻訳もされていますね。『ビバリーヒルズ青春白書』は大ヒット作品! 私も見ていました。

今井 :これもとてもご縁に恵まれた話で……。フェローに通っていた頃にこのドラマがはじまり、毎回欠かさず見ていました。とにかく大好きで、いつかこういうドラマの仕事をしてみたいと、友達に話したこともあります。そうしたら、3年ほど前、シリーズ終盤のDVD字幕の仕事が私に回ってきたんです。以前制作会社の方に、この作品のファンだとお伝えしたことを覚えてくださっていたんだと思います。

岡田 :それは興奮しますね!

今井 :「なんて恵まれているんだろう」と思いましたね。日本での、記念すべき第1回目の放送を私はリアルタイムで見ました。その20年後に同じシリーズを自分が翻訳することになろうとは……。もう感無量で、最終回は泣きながら訳しました(笑)。

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