岡田 :新しい世界へ自ら踏み出して行くパワーと翻訳への情熱、リアルな社会生活を実体験し続けるバイタリティーに溢れた今井さん。出版翻訳と映像翻訳の両方でご経験が豊富ですが、どちらが向いているかとお考えになることは?
今井 :実はそれを真剣に考えた時期があったんです。仕事が重なって、どちらかを選ばなければいけないことが何度かあって……。悩んだ末、映像に絞りました。
岡田 :なるほど、そんな大事な決断をした時期があったんですね。そうしたさまざまなご経験をもとに、今後はどんな将来をめざしていますか?
今井 :そうですね、ドラマの仕事をもっとやってみたいです。長く続けてきたドキュメンタリーに比べると、ドラマに関してはまだまだ経験が浅いので。シリーズを全部まかせたいと思ってもらえるような、力をつけたいものです。
岡田 :そういう実力をお持ちの方にはどんな特徴が?
今井 :ドラマは会話が鍵ですから、言葉のセンスがとても重要です。ドキュメンタリーの翻訳には、事実を伝えるという大前提がありますが、ドラマはお芝居ですからね。訳者の解釈や言葉選びによって、おもしろさが全然違ってきます。活きのよいセリフが書けて、ストーリーのポイントがちゃんとつかめる人、でしょうか。
岡田 :なるほど、そう思うと同じ映像翻訳でも、ドキュメンタリーとドラマはまるで違うジャンルの訳ですね。
今井 :全然違います。私もこんなに違うと思ってなかったくらい。ドラマは文字数がすごく少ないんです。1秒以下のセリフが多くて、この文字数で、いったいどうやって訳すんだろうと唖然としました(笑)。でもベテランの方の原稿を見ると、矢継ぎ早に会話が続く時は、文字数を減らすなど読みやすい工夫がなされています。すごいですよ〜。職人技です。
岡田 :そのセンスを磨くいい方法は?
今井 :難しいですね〜(笑)。月並みですが、たくさん映画を見たり、本を読んだりすることでしょうか。
岡田 :最後に翻訳学習中のみなさんにメッセージをいただけますか?
今井 :振り返ってみると、私はすごく縁に恵まれていたと思うんです。でもその縁というものは、外に出なければなかなか得られないものです。翻訳は家の中にこもってする仕事ですが、できるだけ時間を作って外に出て、いろんな人と会うことは大切だと思います。私には留学経験もないし、フェローでも全然優秀な生徒でなかったけれど、もの怖じしないところが、運よく仕事に結びついてきたと思います。
岡田 :ありがとうございました! 今井さんの好奇心と「猪突猛進」パワーに元気をいただきました。新しい世界にためらうことなく突き進み、自らの視野を広げていく志に敬服です。今後、数々の人気ドラマの字幕に今井さんの名前が踊る日もそう遠くなさそうです。ますますのご活躍を期待しています!