アメリア会員インタビュー



「読む人が楽しめる訳文」にこだわり見事採用!

坂田:アメリアWebサイトを見つけて、どんなところがいいと思いましたか?

藤沢:出版や翻訳の業界にまったく人脈のない人が、翻訳の仕事を実績ゼロからスタートするのはかなり難しいですよね。なので、どうしてもやりたい場合は学校などに通いながら、翻訳力と同時に人脈も開拓していくという方法をとることが多いと思います。一方、自身の経験から考えても、出版社側は常にいい翻訳者を探しています。たいていの出版社は、ベテランか新人かを問わず、方向性を理解して出版社側が求めるスタイルの翻訳を出してくれる訳者を見つけたいはずなのですが、自宅でこっそりいい訳文を書いているひとを見つけ出すのは困難です。アメリアがそんな両者を結びつけている点に魅力を感じました。また、連携しつつもフェローとは別に動いていることが魅力的でしたね。その学校に行った人だけが登録できる人材バンクみたいになってしまっては、良さが半減してしまうでしょうから。

坂田:それで仕事として翻訳を考えるようになったのですね。アメリアに入会してから、どのように活用していますか?

藤沢:入会したのが2008年9月。翻訳の勉強を本格的にしたことはなかったので、ゆくゆくはフェロー・アカデミーの講座を受けてみたいと思っていましたが、何回かトライアルを受けて自分の実力を試してから講座選びをしようと考えていました。アメリアに入会後は、まずWebサイトに載っている過去の定例トライアルを訳してみて、講評を読むなどして独学で勉強を始めました。それから、自分の実力や弱点を知りたいと思い、定例トライアルやコンテストを積極的に受けるようにしました。自分の実力試しだけのために実際の案件のトライアルを受けて翻訳会社やプロダクションの方々の手を煩わせるのは気が引けるのですが、アメリアの「定例トライアル」はその心配もなく、本当のトライアルのように勝負させてもらえるのがいいですよね。

坂田:定例トライアルを受けてみて、どうでしたか?

藤沢:最初に受けたのは、<出版>フィクションと<映像>吹替でした。フィクションは原書を、吹替は題材となる映画のDVDを買って、全編読んだり見たりしてから訳して提出したのですが、結果は両方B。その後も繰り返し受けていますが、いまだBの壁が破れません(笑)。9月には翻訳トライアスロンの第3種目<実務>にも参加し、これは83点でした。初めて評価を受け取ったときは、「ど、どの辺がAじゃないの?」と聞きたかったですね。それを知るためにも、評価を受け取ってから、講評や訳例を読みながら自己添削するようにしています。

坂田:今回、藤沢さんが翻訳された『アグリー・ベティ オフィシャルブックTHE BOOK』(2009年5月、AC BOOKS刊)は、アメリアWebサイトの「スペシャルトライアル」に応募して、翻訳者として採用されたのですよね。

藤沢:はい、仕事につながるようなトライアルを受けるのは、このコンテストが初めてでした。このスペシャルコンテストを知ったのは、最初の定例トライアルに応募して、まだその結果も出ていないときだったのですが、その日のうちに『アグリー・ベティ』のDVDを借りてきて、作品の面白さにどっぷり浸かってしまい、応募しようと思ったわけです。もともと海外ドラマには興味がありましたが、題材となる作品が面白くなかったら応募していたかどうか……わかりません。また、課題の原文を読んで、自分自身が原書を読んでみたいと感じたことも応募した理由の一つです。

坂田:そうですか。自分が気に入った作品だと、翻訳もスムーズにできそうですね。課題文を訳すとき、いちばん気をつけたことは何ですか?

藤沢:誤訳しないことはもちろんですが、読んでいる人が楽しめる訳文を心がけました。インタビューが多かったので、読みやすい話し言葉を心がけつつ、跳ね過ぎないように……。正しい訳文にこだわって雰囲気をぶち壊しにしたりしないように、といったところです。

坂田:なるほど。それで見事、翻訳者として採用されたわけですが、どのあたりが採用された理由だとご自身では分析していますか?

藤沢:採用の連絡はお電話でいただいて、その後はすべてメールでやり取りをしていました。年末に担当の方に初めて会う機会があったのですが、そのとき「訳文のスタイルが求めているものに近かった」とおっしゃっていただきました。原書も参考にしていると思われる雑誌『VOGUE』『ELLE』の日本版を参考に訳し、さらにその点を注記して課題を提出したことが功を奏したようです。

坂田:課題文を正しく訳すだけでなく、その本の性格を把握し、きちんと研究して訳したのがよかったのですね。では、『アグリー・ベティ』をまだ見たことがない人のために、ストーリーを簡単に教えてもらえますか?

藤沢:ベティという名の22歳の女性が、マンハッタンにある一流ファッション誌『MODE』の編集部で編集長のアシスタントになり、これまで出会ったことがないタイプの人たちや環境の中で奮闘するというお話です。一見すると、あか抜けない地域で育った心優しいベティの視点から、ファッション誌編集部という意地悪で華やかな世界を描いているように見えますが、登場人物たち一人ひとりが抱えるバックグラウンドが実に巧妙に描かれているため、ベティ以外のさまざまなマイノリティの視点を垣間見ることができます。コメディでありながら、泣ける場面や心に響くシーンが随所にちりばめられていて、飽きることのない展開を見せてくれるドラマです。

坂田:面白そうですね。では、藤沢さんが訳した『アグリー・ベティ オフィシャルブックTHE BOOK』はどのような内容でしょう?

藤沢:メインは、出演している俳優や関係者のインタビューです。それを、家族・キャリア・ファッションなどのテーマに分け、『MODE』を模したレイアウトでたくさんの写真と一緒に盛り込んであります。具体的にいうと、「家族」はベティと彼女の家族を演じた俳優たち、「キャリア」は『MODE』のスタッフ役の俳優たち、「ファッション」は衣装デザイナーのインタビュー、といった具合です。他に、プロデューサーや監督らのインタビューも含まれています。また本書の特徴的な点は、ドラマの面白さを引き出すための興味深いヒントが数多く収載されていることです。ドラマ内で使われるひねりの利いたセリフや、ゲスト出演している俳優たちのデータなど、ドラマを見たことがある人でも、もう一度見たくなるような内容になっています。最後には各エピソードのガイドも付いています。

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