アメリア会員インタビュー


大田黒 奉之さん

第94回

音楽書籍翻訳のエキスパートは真の「音楽人」。ミュージシャンたちの知られざる世界を日本に伝える 舞台裏のメッセンジャー大田黒 奉之さん

Tomoyuki Otaguro

往年のロックから最先端のミュージックシーンまで。音楽鑑賞をこよなく愛す「音楽人」が見つけた音楽書籍翻訳の道

岡田 :本日のゲストは音楽書翻訳のエキスパートで、名だたるアーティストの伝記翻訳書を多数出版されている大田黒奉之さんです。 訳書デビュー作に『リトルボックス・オブ・ビートルズ』(共訳 ソフトバンククリエイティブ)、代表作に『ジョージ・ハリスン コンプリート・ワークス』『デヴィッド・ボウイ コンプリート・ワークス』 『ロック・コネクション』(すべてティー・オーエンタテインメント)、『ミック・ジャガーの成功哲学』(スペースシャワーネットワーク)などがあります。今日は音楽のお話や大田黒さんの翻訳者としての道のりについて、じっくりとおうかがいしたいと思います。大田黒さん、よろしくお願いいたします。

大田黒 :こちらこそよろしくお願いします。エキスパートと言えるかどうかはわかりませんが、洋楽の伝記翻訳書をとりあえず10冊以上訳してきました。音楽は昔からずっと趣味なんです。

岡田 :趣味を翻訳にいかすことができたとは素晴らしいですね! それにしても訳書のリストを拝見すると、名だたるロック・ミュージシャンが名前を連ねています。ビートルズ、ミック・ジャガー、イーグルス、キース・リチャーズ、デヴィッド・ボウイ、ザ・クラッシュ、ジョージ・ハリスン、スティービー・ワンダー……ビッグな名前がたくさん並んでいますね。

大田黒 :運良く好きなミュージシャンたちのストーリーを訳すことができて、本当に幸せだと思っています。

岡田 :音楽がご趣味ということですが、ご自分でも演奏なさるんですか?

大田黒 :いえ、演奏はしないんです。中学のころビートルズを聞き始め、それ以来もっぱらリスニング専門です。往年のロックだけでなく、R&B、ジャズ、ブルース……そのあたりは興味があるのでよく聞いています。ヒップホップ、ダンス、テクノ、インディーズなど最先端の音楽もひととおり聞くんです。ネットや洋書などで評価されているものはどんなものでも聞いて、自分の中で消化するようにしています。いくら聞いてもわからないものもあるんですけどね(笑)。いつも新しい音楽情報を頭に入れていたい、という気持ちがあるんです。

岡田 :好きなミュージシャンやジャンルにとらわれることなく、最先端の音楽情報にアンテナをはっているとはさすがです。

大田黒:人によるとは思いますが、一般的にある世代になると、最新ジャンルからは卒業して昔よく聞いた音楽を聞き続ける傾向があるんです。でもぼくにとっての音楽はノスタルジーで聞くものではなく、いつもアップデートしていたいもの。音楽はその時代その時代の最新の空気をいちばん先に取り入れていて、それから映画や小説などが続くのかな、と思っているんです。つい、音楽の方に肩入れしてしまいますが(笑)。

岡田 :なるほど、「時代の空気感」ですね。聞いた音楽をひとつひとつチェックしてリストなどを作成されるんですか?

大田黒 :細かくは記しませんが、ちょっと下書きのようにまとめたりはしています。純粋に趣味ですね。ちょこちょこ評論のマネごとも趣味で書いたりしています。

岡田 :真に音楽好きの音楽人なんですね。音楽書籍の翻訳は大田黒さんに最適のお仕事のようです。今日は大田黒さんの音楽人生と翻訳人生についてたっぷりお聞きしたいと思います。

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