アメリア会員インタビュー




前職の知識が生きてトライアルに次々と合格

坂田:初めての翻訳の仕事は、いつ、どのようなきっかけで?

齋藤:出版翻訳が実現したきっかけは、サイト上で開催されていた翻訳オーディションでした。入会はしていませんでしたが、登録するとオーディションの課題の一部がメールで送られてくるシステムで、ずっとチェックしていました。あるとき送られてきた課題が好きな自己啓発もので、英訳版ですがスペイン人が著者のものだったので、「これだ!」と思い、すぐに入会して課題を提出しました。ビギナーズ・ラックですよね。運良く訳者に選んでいただいて。このとき訳したのが、『バルタザール・グラシアンの賢人の知恵』という本で、おかげさまでいまも非常によく売れていて、そのことがこちらの新聞でも取り上げられたりしました。

坂田:本を1冊訳すのは、このときが初めてですよね。

齋藤:はい。訳者に選んでもらったのはよかったのですが、いざ翻訳するとなって思ったのは「どうしよう!」でした。勉強不足なのはわかっていたし、最初は皆さんそうでしょうが、1冊翻訳したことはなかったので、本当に自分にできるのかどうか自信がなくて。ただ、スペインの地方都市に住んだおかげと、年をとったおかげで、心臓に毛も生えてきたので、やるしかないと腹をくくりました。

坂田:その後も出版翻訳の仕事は続きましたか?

齋藤:この翻訳が終わり、今度はアメリアのJOB INDEXでビジネス書の翻訳者募集の案件を見つけて応募しました。東洋経済新報社の仕事で、こちらも翻訳者として選んでいただいて、『究極のマーケティングプラン』と『究極のセールスレター』の2冊を訳しました。

坂田:これはトライアルを受けて合格したということ?

齋藤:それが、トライアルがなく、書類選考だけで決まったので、私もびっくりしました。この仕事が終わってからですが、日本に帰ったときに担当の編集者にご挨拶に伺って、「無名の私をトライアルもせずによく選んでくださいましたね」と聞いたことがあるんです。広告会社にいたという経歴が決め手になったようです。実はこの仕事がきっかけで、他の出版社さんともつながりができたんです。

坂田:というと?

齋藤: この2冊は、経営コンサルタントとして著名な神田昌典さんが監修をしてくださったのですが、私の訳をたいへん褒めてくださって、神田さん監修のダイヤモンド社『ザ・コピーライティング』の訳者として推してくださったんです。

坂田:それは素晴らしいですね。広告会社での経歴が生きていますね。

齋藤:はい、以前勤めていた広告会社には今でも連絡を取っています。その会社で学ばせてもらったことは、コピーライティングやマーケティングなど広告全般に関することだけでなく、仕事のやり方や翻訳にもとても役立っています。

坂田:翻訳に関しては、例えばどういうことが役に立っていますか?

齋藤:私が所属していたのは国際部で、まず私が日本語でコピーを書き、それをたたき台として、外国人コピーライターが各国語のコピーに仕上げ、それを私がチェックする、という仕事の流れでした。外国語のコピーを書くのは、その言語のネイティブなので、チェックするのは、コピーとして重要な部分が抜けていないか、強調すべき場所を間違えていないかといった点でした。自分の書いた日本語をネイティブが例えば英語にした場合、言葉が違えば発想が違い、まったく違った構成や表現になることが少なくありません。そうした異なる言語間のコピーにたくさん触れてきたことが、今とは翻訳の方向が逆ではありますが、役に立っていると思います。また、社内でコピーライティングの研修や勉強会があり、私も参加していたので、今から思えばそうしたすべてがベースになって、日本語を書く基礎ができていたのかなと思います。

坂田:仕事はそれからさらに広がりましたか?

齋藤:その後、東洋経済新報社から直接声をかけていただいて『マンデー・モーニング・リーダーシップ』を訳し、またアメリアのJOB INDEX経由で応募した講談社のお仕事に採用され、『宇宙の法則 4つの真理』を訳しました。それからすぐに、アメリアで東洋経済新報社のスペシャルコンテストを見つけて応募しました。こちらも運よく選んでいただき、ふたを開けたら、以前2度お仕事させてもらった編集者さんでした。『カオティクス』という本です。


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