アメリア会員インタビュー

実務と出版の仕事を同時並行することも いま注目の医療機器の翻訳とは?

濱野 :実務翻訳と出版翻訳の仕事の割合が現在は半分ずつとのことですが、出版の依頼があったときには、実務翻訳をセーブして出版のほうに専念されるのですか? それとも、常に同時並行でしょうか?

安齋 :出版の仕事を受けたときには、できるだけ専念できるように調整します。ですが、たとえば企業ホームページの記事更新など、以前手がけた案件に追加作業が生じた場合や、小さな案件なら対応できそうな場合などは、実務案件も極力お受けするようにしています。ただ、両分野の案件が重なったとしても、1日のなかで2つの分野の仕事をするのはなるべく避けていますね。日替わりで分野を変えるときは、その日の実務翻訳のノルマを終えたら、次の日にやる出版翻訳を2〜3行くらい訳しておくという風にしています。就寝前に頭を切り替えておけば、翌日、作業に取りかかりやすいので。

濱野 :なるほど、前日のうちに切り替えておくというのはとても効率的ですね。実務翻訳のほうは、医療機器や工業機器がご専門とお聞きしましたが、メディカル翻訳のなかでも医療機器はとくに最近注目のジャンルですよね。安齋さんは具体的にどのような翻訳を請け負っていらっしゃるのでしょうか?

安齋 :医療機器を翻訳の観点からざっくりふたつに分けると、カテーテルや人工関節など体内に直接入れるものと、MRIやCTといった画像診断装置など体外で使うものがあります。私がおもに依頼を受けるのは、後者の体外で使用する機器です。分野はマーケティングと、医療機器メーカー勤務時代に関わっていた薬事が中心です。マーケティングのほうは取扱説明書、製品カタログ、市場調査報告書、あとは企業や団体・自治体のホームページ……

濱野 :薬事というのは?

安齋 :薬事法を遵守するための業務と言えば分かりやすいでしょうか。医療機器を日本国内で販売するには、厚生労働省からの認可が必要です。その申請のため、薬事法に定められた品質や安全性を満たしていることを証明する資料を提出しなくてはいけません。生産拠点が海外にあるメーカーの場合、製造や品質に関わる元データは英語で書かれているので、そこで翻訳が発生するというわけです。また、メーカーは一度受けた許可を維持するために、各国の医療機器の安全性情報や管理当局の対応状況、国際規格などのデータを継続的に収集し、定期的に監査を受ける必要がありますので、その都度、さらに翻訳の需要が発生します。

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