アメリア会員インタビュー

高校の英語の授業で出合った翻訳の世界 大学卒業後は医療機器メーカーでOJT

濱野 :フリーランス翻訳者になるまでの経緯についてお伺いしたいのですが、翻訳を意識するきっかけやターニングポイントは何かありましたか?

安齋 :子供のころから、読書環境と英語環境に恵まれていたことが大きく影響したと思います。当時まだ珍しかった英語科の高校に進学し、一般的な英文和訳とはちがう本格的な翻訳に取り組んだことが、翻訳家をこころざしたきっかけですね。授業で世界的文豪の短編を訳してみて、「将来こういう仕事をしたい」と、唐突に宣言しました。

濱野 :高校で翻訳の授業があったというは、まさに運命ですね。その後、すぐに翻訳の仕事にたどり着くことになるのでしょうか?

安齋 :大学では英米文学と国際関係学を専攻し、そのころからフリーランス翻訳家になるのが最終目標だと決めていましたが、当時は社会経験を積んでから翻訳家になるのが一般的とされていましたので、まずは企業に就職しました。行政系の出版社で営業を1年、損害保険会社で事務を5年。この時期に翻訳学校の通学を始め、出版基礎コースに3年ほど通いました。

濱野 :少しずつ、でも着実に翻訳の仕事に近づいていますね。いまのところ実務翻訳の話はまったく出てきませんが、メディカル翻訳に携わることになったきっかけは?

安齋 :翻訳学校で学ぶあいだに、実務と出版の二本柱で行こうと決め、専門分野を探すなかで縁があったのがメディカルだったんです。3年間の基礎過程が終了したところで、仕事として翻訳に取り組んでみようと思い、会社員生活に一度区切りつけました。派遣に切り替えて、英文事務や翻訳の業務を始め、初めのうちはITやマーケティングに携わったのですが、カタカナへの置き換えが多かった。もっと文章を組み立てたり練ったりできる分野はないかと派遣会社に相談したところ、薬事法改正を控えて翻訳業務が急増していた医療機器メーカーを紹介していただけました。そこにうまくフィットして5年ほど業界経験を積み、知識や翻訳術を身につけました。

濱野 :まさにオン・ザ・ジョブ・トレーニングですね。

安齋 :まさしくそうです。じつは実務翻訳の勉強は一度もしたことがなくて、オンサイト時代に得たものすべてが、独立後に役立っています。私のように、医療機器からメディカルを始めて、その後ライフサイエンス、工業機器、ITというように守備範囲を広げたケースは変則的だと思うのですが、すべてはこの時期の経験のおかげだと思っています。

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