アメリア会員インタビュー



受けてみないとわからない、トライアルの難易度やポイント

坂田:このころ、英文事務と翻訳のオンサイトの仕事をしながら、週末は通学講座に通い、さらに通信講座もとなると、かなり忙しかったのではないですか?

島崎:そうですね。今思うと、ハードだったと思いますが、あのころはがむしゃらだったので、大変さはあまり感じませんでした。それに、そろそろ主人の転勤があるかもしれない、と思っていたので、何とか1年以内にある程度の結果を出したいと焦ってもいましたね。

坂田:そうですか。フェローの通信講座「マスターコース金融」は、上級者向けの専門性の高い講座ですが、受講してみていかがでしたか?

島崎:この講座では、とにかく徹底的に調べるようにと指導を受け、何をどう調べればよいのか、その手順を教わりました。ITのときは、どのソースを調べればよいのか、なかなかカンが働かなかったのですが、金融だとある程度勝手がわかっているので、スムーズに調べられたような気がします。

坂田:では、徐々に翻訳力が上がっていくのが自身でも感じられましたか?

島崎:手応えという意味では、このころ翻訳に関する書籍をいろいろと読んだのですが、訳すときに後ろから前へ折り返して訳さず、前から順番に訳すいわゆる“正順訳”の本を読んだことがあって、それができるようになったとき、手応えを感じました。英文事務をするようになってから英語を読む量も断然増えて、また学校に通うようになって訳す量も増えました。そのうちに雑誌やニュース記事を読んでいても、課題を訳していても、折り返さずに前から意味を取ることができるようになったな、と感じたんです。そのころから、英文を読むのがとても楽になりました。

坂田:それは、いつごろ感じましたか?

島崎:けっこう最近ですよ。翻訳の勉強を始めたばかりのころは、課題をするのに必死、調べものに必死で、それどころではありませんでした。半年以上経って、課題をこなすのに一通り慣れて、ちょっと余裕が出てきたころに感じました。

坂田:その手応えは、トライアルを受けても合格しそうだという自信に繋がりましたか?

島崎:いいえ、それだけでは、まだまだ自信なんてありませんでした。通っていた翻訳学校のトライアルは冬ごろに受ける予定になっていたのですが、大丈夫かどうか不安で不安で……。その前に、トライアルがどういうものなのか体験してみたいと思い、1つ受けてみることにしました。

坂田:トライアルの予行演習?

島崎:予行演習なんていうと、申し訳ないですよね。翻訳会社さんは手間をかけてトライアルを行っているわけですから。もちろん軽い気持ちではありませんでしたが、とにかくどんな課題が出るのか体験してみたいというのが本音でした。分野がいくつかあったのですが、なかでもいちばん馴染みのある金融を選んだところ、証券分野の課題が届きました。

坂田:実際に課題を訳してみて、いかがでしたか?

島崎:一応できたけれども、これでいいのかどうかわからない、というのが正直な感想でした。原文通り訳すべきか、どこまで読みやすくしていいもののか、また専門用語が出てきたときに説明を加えた方がいいのか、加えるならどの程度まで説明すべきか、その加減がわかりませんでした。トライアルの課題文に意図的に間違いを入れ、それを翻訳者が指摘できるかどうかを見る会社もあると聞いていたのですが、このときのトライアルでまさにそのひっかけの間違いが1箇所ありました。それを、どのように指摘すればいいのか書き方がわからなかったし、果たして間違いは1箇所なのか、他にもないのか、考えていたら何もかもがクエスチョンで、大きな不安を抱えたまま提出しました。

坂田:その結果は?

島崎:それが、合格していたんです。日英と英日と両方受けて、日英は不合格でしたが、英日は合格でした。特に翻訳会社からのコメントはなかったのですが、合格したことで、調べる過程や、適語・適訳の抽出方法は間違っていなかったんだな、ということがわかりました。11月に合格の通知を受け、その後すぐに最初のお仕事をいただきました。

坂田:順調なスタートを切ったわけですね。その後もトライアルを何社か受けたんですよね。

島崎:はい。冬に3社受けたところ、2社が合格で1社が不合格でした。この不合格の1社のみ、レベル判定が届いたのですが、A、B、C、Dの4ランクの、最低のDだったんです。

坂田:他は合格で、1社のみD判定ですか。どうしてでしょう? 分野が他とは違っていたとか?

島崎:この不合格だったトライアルの課題は、論文でした。内容は経済動向の分析です。理由はわかりませんが、何か致命的なミスをしていたのか、あるいは訳文のスタイルが論文に合っていなかったのか……。とにかく何が悪いかも自分自身気付いていなかったわけです。確かに論文はあまり読んだこともなく、そのことを認識できただけでもよかったと思っています。翻訳会社がトライアルの課題に出す内容は、その会社にとって最もクライアントから依頼を受けることの多い翻訳分野だと思うので、再度この会社のトライアルを受けるのであれば、論文の翻訳を勉強してからでないといけないな、と思っています。

関連する会員インタビュー
実務翻訳