アメリア会員インタビュー

デビュー以来、途切れることなく仕事を受注 「できることはなんでもやってみました」

濱野 :フェロー・アカデミーでは、どのような講座を受講されたんですか?

金井 :最初は「出版基礎」を受けて、そのあとは通学と通信講座で2年ほどミステリーの学習をしました。

濱野 :出版翻訳は狭き門なので、学習している方みんながデビューできるわけではないと思います。金井さんがデビューのチャンスをつかむきっかけはどんなことだったのでしょうか?

金井 :やはり、講師の方の下訳が大きな転機だったでしょうか。あるとき、かなり大部の作品の下訳をいただいたことがあり、思い切って退職して翻訳に専念することにしたんです。先生には「渡った橋を焼いてしまうことになるよ」と言われましたが、決意は変わりませんでした。その後、ハーレクイン社のプロダクションのトライアルを受ける機会に恵まれ、初めての訳書を出せることになりました。

濱野 :退路を断って翻訳学習に専念、下訳を経てハーレクインでデビュー……プロフィールを拝見すると、その期間がわずか3年ほど。順調そのものですね。金井真弓さん名義での初の訳書、2005年の『コーチング選書04戦略的質問78』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、どのような経緯で担当されることになったのですか?

金井 :じつは、ディスカヴァー・トゥエンティワンから次に出た『go to survive 夢を追った航空会社1500日戦争』がほんとうは先に出版される予定でした。この本は、私がリーディングを担当し、そのまま翻訳を担当させていただくことになったものです。こちらを訳しているあいだに、「急ぎの本があるから1ヵ月で訳してくれないか」と頼まれたのが『コーチング選書〜』で、結局そちらが金井真弓名義のデビュー作になったという経緯でした。

濱野 :1ヵ月でというのもすごい話ですね。その後はさまざまな出版社から訳書をお出しですが、どのようにお仕事の幅を広げていったのですか?

金井 :編集者さんからお声がけいただいて翻訳した本もあれば、自らアメリアを活用して企画を持ち込んで採用されたこともありましたし、トライアルに合格して受けた仕事もあります。私の場合、ひとりの師匠に師事して学習するという形ではなかったので、自分でなるべく開拓しなくてはと思い、できることはなんでもやってみました。

濱野 :競争も激しい世界だと思うので、やはり待っているだけではダメですよね。すばらしいことだと思います。これまで70冊近くを訳されたなかで、とくに印象的な作品はありますか? いちばん大変だったとか、楽しかったとか。

金井 :どの作品も、それぞれ大変と言えば大変ですが……。強いて言えば、2007年に出版された『ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ』(英治出版)でしょうか。著者のデヴィッド・ボームさんという方は物理学者で、「物理学者が書いた対話の方法論」というスタンスの本なんです。やはり物理のことをきちんと理解していないとわからない部分が多々あり、物理関連の本を読み漁って勉強しました。いまはもう忘れてしまいましたけれど、そのときはかなり物理に詳しかったかもしれません(笑)。自分なりに苦労して一生懸命訳した作品だったので、「訳が良かった」という感想をネットで見つけたときは、すごく嬉しかったのを覚えています。

濱野 :「訳が良かった」という一言は翻訳者として嬉しいものでしょうね。

金井 :そうですね。まあ、叩かれることもあるのですが(笑)。

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