濱野 :本日のゲストは、水墨画家の鮫島圭代さんです。鮫島さんは海外でも個展を開き、アパレルブランドとコラボ商品を出したこともある芸術家。また、芸術活動に勤しむ傍ら、美術ライターや翻訳者としてもご活躍されています。今日は翻訳だけでなく、水墨画の世界についてもたっぷりお聞きしたいと思います。まずは鮫島さんが英訳を担当された『日本の文様ものがたり 京都「唐長」の唐紙で知る』(講談社、2015年)についてお伺いしたいのですが、どのような本なのでしょうか?
鮫島 :京都の伝統工芸で、かつて日本家屋の壁紙などに使われていた唐紙(からかみ)の歴史、水文や桜、松などの吉祥文様の由来や意味などを解説する本です。著者は、大変希少な唐紙屋「唐長」の唐紙師トトアキヒコさんという方で、唐紙への想いを綴ったエッセイなども掲載されています。
濱野 :デザインについての本だけあって、とてもお洒落な装丁ですよね。鮫島さんはどの部分の翻訳を担当されたのでしょうか?
鮫島 :本書では大部分が日本語と英語の併記になっているので、その英訳を担当させていただきました。具体的には、文様を解説するキャプション部分、歴史の説明、著者の解説などですね。
濱野 :英訳となるとネイティブチェックも必要になると思いますが……
鮫島 :今回はアメリア経由で直接お話をいただいたのですが、翻訳とネイティブチェックの両方込みで、というご依頼だったんです。美術館の音声ガイドの仕事でいつもご一緒させていただいているアメリカ人の方にネイティブチェックをお願いしました。
濱野 :なるほど、英訳の仕事では、ネイティブの知り合いの存在もかなり強みになりますね。
鮫島 :そうですね。さらに、その分野に詳しい方がいるといいですね。その点、今回ネイティブチェックを頼んだ方は日本美術に造詣が深いので、有り難かったです。
濱野 :そのほか、現在はどのような翻訳に携わっていますか?
鮫島 :海外の大型美術館の書籍や、日本の工芸の解説文、伝統工芸と企業とのコラボ事業の翻訳などのお仕事をいただいています。美術の専門性の高い翻訳のお仕事の機会が広がっていて、とても楽しく、感謝しています。
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