濱野 :翻訳者は朝型・夜型に分かれるなどとよく言われますが、辻さんはいかがですか?
辻 :うーん、“一日だらだら型”でしょうか(笑)。だいたい朝8時過ぎにパソコンの電源を入れて、まずはメールやSNSをチェックします。それから翻訳やリーディングの仕事に取りかかり、家事なども随時やりながら、昼食や夕食をはさんで夜11時を目途に仕事を終えるようにしています。
濱野 :かなり長時間仕事をされるんですね。翻訳の仕事をするうえで、パソコン環境、辞書ソフトの利用など、何か工夫している点はありますか?
辻 :とくに専門的なことはしていませんが、デスクトップとノートパソコンをネット接続、メールの設定、辞書ソフトに至るまで完全に同じ環境にしておいて、それぞれのパソコンで半日ずつ仕事をするようにしています。たとえば1日の前半にデスクトップで翻訳を進めたら、続きはノートパソコンで作業するといった具合です。
濱野 :ほぼクローン状態のパソコンが2台あり、同じように作業ができるということですね。
辻 :はい。特別なことをしなくても、1日の仕事の流れのなかで自然と2台のパソコンが最新の状態に同期されるというわけです。こうしておくと、どちらか1台がクラッシュしたとしても、問題なく仕事を進めることができますので。
濱野 :なるほど! 私の場合、仕事の原稿などはUSBメモリや外付けハードディスクに保存してあるので、バックアップという点では問題ないのですが、メインのパソコンが壊れたときは厄介です。実際にパソコンがダウンしてしまい、古いノートパソコンを引っ張り出してきて仕事を続けたことが過去に1、2度あったのですが、最新のソフトが入っていなかったり、インターネットの設定ができていなかったりで、かなり時間を取られました。辻さんの方法であれば、一方のパソコンが故障しても、ほぼ同じ環境でそのまま仕事が続けられる。
辻 :そうなんです。時間のロスは少なくて済むと思います。外出先での仕事用にモバイルPCも1台持っていて、そちらもすべて同じ環境に設定してあります。
濱野 :すごい徹底ぶりですね。ところで、外出先でも仕事をなさるんですか?
辻 :貧乏性というか心配性というか……(笑)。旅行先などでも、ちょっとでも時間が空くと仕事のファイルを開いてしまいますね。1日10分でも、1段落でも進めておかないと、不安になってしまうんです。1行も訳せないときも当然ありますが、モバイルPCを持っていると安心できるんです。お守りみたいなものですね(笑)。