濱野 :辻さんのお話をお伺いしていると、心から本を愛している、というのが伝わってきます。
辻 :翻訳の仕事の休憩中にも本を読んでしまうようなタイプですから……(笑)。
濱野 :ロマンスのほかにも、ミステリー作品を好んで読まれるというお話でしたが、どのような作品や作家がお好きですか?
辻 :ミステリーのなかでも、とくにサイコサスペンスが好きで、テス・ジェリッツェンやモー・ヘイダーの大ファンです。
濱野 :サイコサスペンス……猟奇的な殺人などの話ですよね? ロマンスとサイコサスペンスというのは、両極端ですね。
辻 :そうですよね。無意識のうちにバランスを取ろうとしているのかもしれません(笑)。
濱野 :仕事以外で本を読むときは、日本人作家の本も読まれるのでしょうか?
辻 :日本の作家の本も読みますが、やはり翻訳ものが圧倒的に多いですね。あまり偏らないように、日本語と英語の本を交互に読むことを心がけています。プライベートで洋書を読むときには、リーディングの仕事と同じようにメモを取りながら読んでいます。おもしろい作品にめぐり合えたら出版社に持ち込みたい、という下心からです(笑)。
濱野 :本当に読書がお好きなんですね。仕事中も、休憩時間も、プライベートでもずっと本を読んでいらっしゃる。仕事以外で英語の本を読むときには、どのように作品を選ばれるのですか? 持ち込みも視野に入れているとなると、話題作やベストセラー以外から選ぶことになりますよね?
辻 :情報収集の手段としては、主にSNSを活用しています。なかでもツイッターの情報が役に立ちますね。たとえば、ある作家をフォローしていると、その作家が友人の作家の新作についてツイートすることがよくあります。そういった情報を得たら、あらすじをアマゾンなどで確認して、自分の好みに合いそうであれば購入して読むようにしています。
濱野 :すごい……まさに翻訳と読書一色の日々ですね。最後に、今後の夢をお聞かせいただけますか?
辻 :出版翻訳の仕事を続けられること自体が幸せなので、さらに何かを望むのもどうかとは思うのですが……欲を言えば、ロマンスものの翻訳を続けつつ、ミステリー作品の仕事が増えれば夢のようですね。とくに、サイコサスペンスを訳すことができれば、それ以上の幸せはありません。
濱野 :普段から大量の原書を読んでいる辻さんですから、もしかするとご自身の持ち込み企画で夢が実現するかもしれませんね! 今日はお忙しいところありがとうございました。辻さんが長いあいだ第一線でご活躍されているのは、やはり「翻訳が好き」「本が好き」という強いお気持ちがあるからこそなのではないかと感じました。今後のさらなるご活躍をお祈りしております。