アメリア会員インタビュー


喜須海 理子さん

第84回

子供の頃から大好きだったミステリーと、会社勤めで身につけた英語力。30歳を過ぎたとき、そのふたつが初めて交差―出版翻訳の世界へ喜須海 理子さん

Michiko Kisumi

ミステリーとロマンス分野で訳書は20冊近く 大人気のノーラ・ロバーツ作品を訳すまでに

濱野 :本日のゲストは、出版翻訳の世界でご活躍の喜須海理子さんです。ミステリーでは、CWA賞(英国推理作家協会賞)受賞の話題作『石が流す血』(ランダムハウス講談社文庫)などの訳書をお持ちで、ロマンスではペンネームであのノーラ・ロバーツの作品も訳されているんですね。まさに大活躍ですね。

喜須海 :いえいえ、まだまだですけれど、最近はやっと「翻訳やっています」と言えるぐらいの仕事をさせていただけるようになりました。私の場合、翻訳学校での学習期間が10年以上あったので、かなり長い道のりでしたが。

濱野 :最近はロマンスのお仕事が多いようですね。ノーラ・ロバーツの作品はどういう経緯で訳すことになったのですか?

喜須海 :編集プロダクション経由でご依頼いただきました。その編集プロダクションには、2度目の挑戦でトライアルに合格して以来ずっとお世話になっています。

濱野 :昨年11月に出版された最新作『冬の歓び―わたしだけのハリウッド・スター』(集英社クリエイティブ)もロマンス作品ですよね。こちらも同じプロダクション経由で?

喜須海 :いえ。実はこの作品を訳すことになったのは、もとを辿れば、アメリアが縁なんです。もう10年以上前の話ですが、アメリアがまだFMC(フェロー・メンバーズクラブ)だった頃、FMC経由でリーディングを依頼してくださった編集者の方がいて。その後もリーディングのお仕事をいただいたり、私も訳書を送ったりして、途切れ途切れながらも縁が続いていました。それで、その方が会社を移って集英社クリエイティブでロマンスを担当することになったときに、私のことを思い出してくださって、初めて翻訳のお仕事でご一緒することになりました。

濱野 :人の縁ってすごいですね。十数年かけて、初めての翻訳依頼とは。

喜須海 :出版翻訳って、もちろん実力も大切ですけれど、人の縁の力もすごく大きいと思います。あとは、運とタイミングでしょうか(笑)。

濱野 :20冊近く訳されていると、もうどんな作品でも来いって感じですか(笑)?

喜須海 :ぜんぜんですよ。何年経っても、何冊やっても、自分がうまくなったという実感はありません。もちろん、勉強を始めたころに比べると少しは上達しているのかもしれないけれど、毎回1ページ目を訳しはじめると「これ、できるのかな」と不安になってしまって。そんなときは、これまでの自分の訳書を引っ張り出してきて読んでみるんです。「ああ、これくらいできているんだから、今回もできるはず」と自分に言い聞かせてやっています(笑)。

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