アメリア会員インタビュー




仕事探しにはもっぱらインターネットを活用 翻訳に必要なスキルとは何か、徐々にわかってきました


:退職されて、自宅で翻訳の仕事を始めようと思ったということですが、まずは何から始めたのですか?

中井:いろいろな方の経験談を読むと、最初は仕事がこないらしいということでしたので、専業主婦業の傍ら、ぼちぼちとやっていければいいかなぁとも思っていたのですが、どうもついつい入れ込んでしまう性格でして、気がついたら、かなり夢中になって英語の勉強をしていました。

坂田:英語の勉強というと、どのようなことを?

中井:通訳ガイドの受験用講座を受講したり、個人教授についてみたりもしたのですが、基本的には、渡米当時にやったこと−ひたすら英語で読む・書く・聞く時間を増やしました。テレビは極力2カ国語放送を英語で聞く、東京在住時代はAFS(在日米軍基地関係者のための24時間英語放送。AM 810kHz)を聞く、インターネットでNYタイムズを読む、読書が好きなのですが和書はやめてペーパーバックにする、入浴時にタイムを読む……などなど。あとは、TOEIC受験の勉強も少しやりましたが、すぐに950点が取れたので、参考書は“積ん読”になってしまっています。わりと飽きっぽいので、これに飽きたら次というように、英語と縁が切れないようにしています。

坂田:実際に、翻訳の仕事を始めたのはいつ頃ですか?

中井:仕事を探し始めたのが一昨年の春頃、いくらか手応えが出てきたのが、その年の暮れ頃ですね。その後、公務員の夫が久しぶりに転勤で東京を離れることになり、それでは家族で行こうかと決めたのが次の年の春でした。


坂田:仕事は、どのようにして探しましたか?

中井:ネットワーカー歴が長いので、主にインターネットで探しました。体調の問題もあり、当分、外勤はできないと思っていたので、自宅でできそうなものを探し、英語に関する仕事をいくつか見つけました。上手くいかなかったものもあり、しばらく続けてから辞めたものもあり、現在も続いてしっかりとした仕事になっているものもあります。例えば、eラーニングの添削の仕事はインターネットで応募して、現在も結構大きな収入源になっています。あとは、出版社のリーディング、英語教師、ちょっとした翻訳など、友人が紹介してくれた仕事もあります。

坂田:東京から大分へ引っ越したことで、仕事に影響はありましたか?

中井:どこに住んでいても、けっこうインターネットでやっていけるのではないかとは思っていましたが、引っ越してしばらくは、ちょっと見込みが甘かったかと思いましたね。実はそんなことはなく、今ではなんとかなっていますが。

坂田:“見込みが甘かった”というと?

中井:トライアルの壁ですね。実務翻訳はとても厳しいという話を聞いていましたので、実務経験が必要なところは応募できないと思い込んでいたので、インターネットで募集しているところで応募できるところはほとんどありませんでした。チェッカーや、オンサイト勤務、派遣の英文事務などを経験してから、自宅専業になるものだとも聞かされて、そうなると、大分ではそういう方面の仕事はとても少ないので、専業主婦生活を楽しむようにした方が良いかなと、弱気だったんです。結局のところ、見込みが甘かったというよりも、仕事に対する知識が足りなかったのですね。学術系の翻訳でも、やったことがあれば実務経験として数えてもよいのだとか、当たり前のことですが、お仕事をする基本的な心構え「最善をつくして、納期を厳守!」が大事なのだとか、研究職では当たり前のリサーチが実は仕事をするうえでとても役に立つのだとか、そういうことがわかっていなかったので、勝手に諦めてしまっただけでした。

坂田:その“仕事に対する知識”ですが、どのようにわかるようになってきたのですか? 

中井:そうですね、やはり仕事をしながら学んでいった部分が大きいです。アメリア会員の体験談などを読んでも、その時点の自分の経験を使って理解しようとすると、夢や憶測も混じってしまって正しい理解にならないこともあります。例えば、「ただ英語が出来るだけじゃなくて専門知識を」と言われても、自分が未経験の時にはピンときませんでした。「専門家にならないとダメなんだ……」と思いこんでしまったりして。でも、実際に仕事を経験した今では、必要なのは、専門知識であっても理解できる“読解力”と、それを専門家が見て変ではない英語や日本語にできる“表現力”と、その2つを支えることが出来る“リサーチ力”が必要だと言っているんだなと理解できます。

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