アメリア公式ブログ

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本日はアメリア会員の笹山裕子さん共訳のこちらの作品をご紹介いたします。



まずは作品紹介から。
イギリスで130万部、全世界で300万部を突破したベストセラー、待望の翻訳。第二次世界大戦下のアウシュヴィッツで同胞に鑑識番号を刺青する役目を割り当てられたユダヤ人の男がその列に並んでいた女性と恋に落ちて「絶対に二人で生きてここを出る」と心を決め、あまりに非人間的な日常の中でささやかな人間らしさと尊厳を守り抜くために重ねた苦闘と誓いの物語。「タトゥー係」本人の証言による実話に基づく。双葉社HPより

版元は双葉社さん。昨年から本格的に翻訳出版を始められたそうですが、海外ベストセラーを手掛けられるのは本書が初めてだとか。
ぜひ詳しくご紹介させていただきたいと思い、担当編集者のAさんに直接インタビューさせていただきました

原書を見つけたきっかけは?
ブックフェアでフランクフルトに行った際、会場ではなく街の書店で見つけました。ぱらぱらとめくってみると非常に興味深いテーマだなと。ブックフェアの会場でも出版社のブースでイチオシとして紹介されているのを見て、さらに興味が湧きました。アウシュヴィッツ収容所の生存者は年々減り、ヨーロッパではこういった人々の証言を残す動きが活発です。本書のような作品は、日本でも普通のテーマとして受け入れられるのではないかと思いました。

翻訳者の起用はどうやって?
今回の作品は金原瑞人さんと笹山裕子さんの共訳ですが、金原さんのお仕事は以前から拝見しており、最初からこの本は金原さんにお願いしたいと思っていました。原書は無駄な抑揚をはぶいた、淡々とした文章で綴られています。金原さんならこういった作品を端正な訳で、かつ、わかりやすく訳していただけるのではないかと思いました。

翻訳を依頼するにあたって事前に「こうしてほしい」などお願いはありましたか?
文体など、特に細かいことはお願いしていません。ただ「読んだ人が自分を重ね合わせられるような感じでお願いします」と伝えました。

読者に向けて一言お願いします
本書にはたくさんの人が登場します。そしてその誰もが、自分と同じ普通の人たちです。そういった普通の人が戦争という時代に翻弄され、普通ではない状況下で生きざるを得ませんでした。それは自分に置き換えて考えてみれば、今、われわれ自分たちが当たり前に過ごしている生活や、当たり前に感じている幸せは、いともたやすく奪われるものということではないでしょうか。「普通」であることはあたりまえではありません。そして、これは決して遠い昔の物語ではありません。そうしたことを本書を通じて考えてもらえればと思います。

最後に、Aさんがこのような言葉を教えてくださいました。
アイゼンハワー司令官がナチスの収容所の実態を知って残した有名な一言(手紙の引用など、原典は諸説あり)だそうです。

「全て記録に残せ、画像を残し、証人を得るんだ。なぜならいつか歴史のどこかで、どこかのバカ者が立ち上がって『これは起こらなかった』と言うから」

双葉社さんのツイッターもぜひご覧ください。きっと編集者さんのさまざまな想いを感じ取っていただけると思います。
こちら→CLICK!

後世まで読み継がれるであろう本書。装丁も美しく、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

Aさん、このたびは貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
双葉社さんらしい刊行物を、今後も楽しみにしております。
そして、笹山さん、このたびはお知らせいただきありがとうございました。
今後またご活躍のお話を聞かせてくださいませ。楽しみにお待ちしております。

アメリア事務局 河原