スペシャルコンテストから翻訳書3冊刊行!
出版社の文響社さんから依頼を受け、昨年開催しましたスペシャルコンテスト。
そのスペシャルコンテストを通じて、このたび翻訳書が刊行されました。
いずれも哲人に学ぶ人類の知恵シリーズとして刊行されたものですが、
それぞれ翻訳を担当してくださったアメリア会員の方から、素敵なコメントをいただきました。
セネカ『怒らない方法』…翻訳者:舩山むつみ様
ローマの賢人セネカの原作ですが、とても読みやすく、親しみやすい英訳でしたので、その雰囲気を生かして訳すように心がけました。原作が書かれたのは約2000年前、作者はローマの政治家として暴君カリギュラやネロの時代に生きた人ですが、読んでみると、人間というものは生きた時代や地位には関係なく、同じような悩みをもっているのだなと不思議な感じがしました。
現代の人が読んでも共感でき、悩みに答えてくれる本だと思います。
この作品は、文響社の「哲人に学ぶ人類の知恵シリーズ」の第一弾で、今後もギリシャ・ローマの哲人たちの著作が読みやすい文章でどんどん登場する予定だそうです。
本棚に並べたくなる感じの上品な色の装丁で、同じシリーズの次の作品を読むのも楽しみにしています。
キケロ『人と仲良くする方法』…翻訳者:竹村奈央様
アメリアのスペシャルコンテストに応募し、こちらのお仕事をいただいたときは「経験の浅い自分が、2000年以上も読み継がれている古典を翻訳できるなんて」と信じられない思いでした。
原書の『How to Be a Friend』は、紀元前1世紀のローマの政治家キケロが親友アッティクスに宛てて書いた『友情について(De Amicitia)』をわかりやすい英語に再編集、翻訳したもので、英訳者による序文・キケロ自身による序文(アッティクスへの手紙)・本文、という構成になっています。本文は紀元前2世紀に活躍した軍人ラエリウスと娘婿たちの対話という形式で、ラエリウスが亡き友を偲びつつ、友情について語ります。
話に出てくる様々なエピソードは、史実でありながらキケロの主観を交えて語られていますので、事実関係を把握した上で、その出来事をキケロはどう見たかという点をできるだけ理解し、また書簡集などを読んでキケロとアッティクスの関係をイメージしながら訳を進めました。訳文は文語調にならないように気をつけ、声に出してみてしっくりくるまで推敲しました。
また、自分がそれまでに携わったお仕事は、ビジュアルブックというのでしょうか、原書と日本語版の構成がほとんど変わらないものばかりだったのですが、今回、訳文という「素材」が、編集の方々の手を経て1冊の本になるという過程を初めて見ることができました。
完成した本をいただいたときは感慨深かったです。カバーデザインもとても可愛らしいですし、中高生や若い人たちにも広く読んでもらえたらいいなと思います。
『死ぬときに後悔しない方法』…翻訳者:天瀬いちか様
複数ある既存訳を見比べながら、念のためにラテン語の原文にもあたりつつ、自分なりの新しい訳語を探し出す…という
珍しい作業となりました。
(ありがたいことにネットでラテン語の活用が調べられるため、ラテン語を全く知らなくても辞書を引くことができました。)
また、フェロー・アカデミーで2年ほど映像翻訳を学んでいましたが、 セリフの訳し方などにその経験を活かすことができました。
初めて出版翻訳のお仕事をさせていただきましたが、とても貴重な経験となりました。
本シリーズを通じて、過去の偉人たちの考えをこうしてまた新たに知ることができ、現代に生きる私たちにも、
新たな答えを与えてくれそうです。
そして皆さんそれぞれの、お仕事にまつわるエピソードや本書への想い等を知ることによって、今後の刊行がさらに楽しみになりました。
舩山さん、竹村さん、天瀬さん、ありがとうございました。
今後、さらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。
アメリア事務局 河原