岡田 :徹底した時間管理などの自己管理で、プロとして確実なお仕事をこなされる松井さん。今後のマスターコースでの講師をふくめ、出版翻訳や実務翻訳の世界でもますますのご活躍が期待されます。松井さん、現在翻訳学習中の読者のみなさんにメッセージをいただけますか?
松井 :そうですね、とにかく手を変え品を変え、勉強を継続していってほしいと思います。そして「自分が間違っているかもしれない」、とまでは言わなくても少なくとも「自分の訳には改善の余地がある」という可能性を忘れず、きちんと辞書や文法書を引いたり調査をしたりしてウラをとる習慣をつけることが大切だと思います。それから、訳しっぱなしで次の勉強に進むのではなく、復習、見直しも必要です。誰でも自分のミスは見たくないものですが、振り返って自分の弱いところをきちんとおさえる癖がつけば必ず成長します。アメリアのトライアルなどでも、自分の訳と講評で違うところが出てくるはずなので、そこをいかに復習して自分のものにしていくか、が大切ですね。そういう意味では講評のある課題や教材を使って、コツコツ勉強していくのがいいかなと思います。翻訳者は基本的にずっと勉強していかなればなりませんから。
岡田 :プロになっても同様ですか?
松井 :はい。仕事の依頼が来るようになったからと言って、仕事だけしていては難しいと思いますよ。うまい人は後からいくらでも出てきますから。
岡田 :なるほど。そういう意味では、松井さんにとって出版翻訳は訳に磨きをかける実践的なワークショップでもありますね。
松井 :自分にとってはありがたいサイクルです。出版翻訳で磨きがかかった翻訳技術が実務でいかされますから。お世話になっている翻訳会社が「終わったらまた帰ってきてね」と声をかけてくださって、自信にもなっています。もっといい仕事をしようと思ったり。
岡田 :ちなみに松井さんのご趣味は?
松井 :最近、趣味はなくなっちゃいました(笑)。翻訳という作業がじゅうぶん楽しいので、趣味がいらないのかもしれません。運動したり、テレビを観たり、新聞や本や雑誌を読んだりもしますが、それもある意味うまく翻訳できるようになるためにしてしまっている感じでしょうか。
岡田 :翻訳がご趣味、なんですね。訳していて「楽しいー!」と思いますか?
松井 :訳すこと自体はまったくイヤじゃないですから、きっとそう思っているんでしょう。うまく訳せないことは本当にイヤですが(笑)。まあでも、この仕事をやってよかったと、いつも心から思っています。
岡田 :今日はお忙しいところありがとうございました! エンジニアとしての知識を実務でフル回転するばかりでなく、一冊一冊の出版翻訳で表現の技を磨かれる松井さん。時間管理と健康管理、効率アップのスキルなど、翻訳者の心得として参考になるお話をたくさんお聞きできました。今秋からのマスターコースでも、即戦力につながる実践的なアドバイスをたくさんお聞きすることができそうです。今後も訳書を通じて、壮大な科学の世界へのドアを開いていってください。ますますのご活躍を楽しみにしています!