アメリア会員インタビュー

会社に勤務しながら翻訳学習を継続 目標としていたIT翻訳の世界に

濱野 :メディカルのバックグラウンドはお持ちではないというお話でしたが、もともと理系の大学ご出身だったとか?

仁科 :いえ、大学は文系学部で社会心理学を専攻していました。理系の知識といえば、大学受験のために高校で生物を履修していた程度しかなかったので、生粋の文系です。

濱野 :なるほど、ほんとうにバックグラウンドがゼロのところから、ITとメディカル翻訳の世界に飛び込まれたんですね……プロになるまでの経緯をお伺いするのが楽しみです。プロフィールを拝見すると、フリーになる前にIT分野の社内翻訳者・チェッカーとして10年、メディカル分野の社内翻訳者・チェッカーとして3年勤めた経歴をお持ちのようですが、最初の翻訳会社に入るきっかけはなんだったのでしょうか? 

仁科 :大学卒業後の約10年間は、翻訳と関わりのない職場で働いていました。その仕事も興味深いものだったのですが「何か違うことをしたい」という漠然とした思いが当初からあったように思います。そして、仕事を始めて間もない頃のことでしたが、書店で翻訳に関する雑誌をたまたま手に取り、翻訳を仕事として意識するようになりました。ちょうど、このままずっとその職場で働きつづけている自分をあまり想像できず、悩みはじめた時期でもありました。もともと英語は好きだったので、翻訳なら道が拓けるかもしれないと考えたんです。そこで一念発起して、実務翻訳の基礎やIT翻訳の通信講座を受けはじめました。断続的ではありますが、会社に勤めながら数年間かけて講座を受けていましたね。

濱野 :なぜIT翻訳だったのでしょうか?

仁科 :実務翻訳のさまざまな分野について雑誌で読んだときに、いちばんピンと来たのがITでした。技術系の研究職だった父のおかげで小さい頃にパソコンに触れる機会があり、まったく馴染みのない分野ではなかったことも影響していたかもしれません。また、講座の受講を決めた当時はIT翻訳の需要がとても高い時代だったという背景もありますね。

濱野 :それで、会社で働きながら通信講座を数年続けたあと、翻訳会社に転職された。

仁科 :はい。アメリアで社員を募集していた翻訳会社に転職しました。通信教育での学習経験しかなかった私が正社員の翻訳者・チェッカーとして中途採用していただいたのは、とても恵まれていたと思います。その会社に勤めていた10年ほどの間に、IT分野の翻訳、チェック、編集などの仕事を担当しました。

濱野 :ITといっても幅が広いと思いますが、どのような翻訳に携わっていたのですか?

仁科 :ソフトウェアのローカライズが中心でした。1,000ページ近くもある取扱説明書の訳文チェックと編集をすべて一人で担当したこともありました。

濱野 :それはいい経験になりますね。でもIT系ではなく、メディカル系の翻訳者を目指すことになったのは、なぜなのでしょうか?

仁科 :チェックや編集の仕事がメインになり、自分で翻訳したいという思いが強くなってきたからでしょうか……。社内で翻訳そのものを担当することは少ないという印象を持っていたため、翻訳したいのであればフリーランスになる必要があると考えました。ただ、そう思い始めた当時はIT翻訳の需要が低下気味だったので、今後を考えるとITでは不安だなと。それで、勤務を続けながら3年ほど、通信講座や通学講座で他の分野の翻訳を勉強したんです。初めは特許翻訳に挑戦したのですが1年ほどで挫折しました(笑)。その後は治験翻訳の通学講座を受講し、約2年間でいくつかのコースを修了しました。こちらは興味も関心も持つことができ、とても楽しかったんです。それで、最終的にはこの分野のフリーランス翻訳者を目指そうと考え、メディカル分野のチェッカーを募集していた会社に転職し、医薬、医療機器、分析機器などの社内翻訳者・チェッカーとして3年ほど勤務しました。

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