アメリア会員インタビュー


調べものには労を惜しまず。「調べものはおもしろくて苦になりません」

岡田:河野さんがお仕事で翻訳をしているときは、どんなことに気をつけていらっしゃいますか?

河野:時間や締め切りが迫ってくると、スピード勝負になりがちなところもありますが、著者の意図を念頭において訳せばミスは減るんじゃないかと思いながら訳しています。文章の流れや、段落そのものの意図をくみとる。難しいけど、ただ表面だけ訳すと文脈がつながらない文ができあがってしまいますから。そういう点を意識しながら訳していますね。

岡田:なるほど。お仕事している時は楽しいですか?

河野:そうですね。取りかかるまでがタイヘンなんですけど、日本語ができあがっていくのがおもしろいので、はじめてしまえば楽しいです。だんだん油がのって、エンジンがあったまって……。締め切りも追いかけてくるし(笑)。

岡田:河野さんの作品を拝見すると、入念な調べものが必要そうなものが多いですね。

河野:調べものはたくさんします。今はインターネットをフル活用できますからラクですが、ネットがなかったらこの仕事はなかなか厳しいですよ。裏トリの事実関係のチェックとか、年号のくいちがいなどを英文で検索したりします。あとは固有名詞の表記なんかもチェックしますね。地味な仕事です(笑)。

岡田:特に中東関係だと、日本語の表記がされてない場合や統一もされていない場合がありますよね? そんな時はどうしますか?

河野:新聞によっても表記が違ったりしますが、やっぱりいちばん一般的に使われているものやネットで多く使われているものを選ぶようにしています。まったく日本に紹介されていない言葉は、youtubeで検索して音声を聞いて、発音を調べてカタカナ表記したりしますね。そういった調べものの繰り返しです。

岡田:なるほど。調べものには労を惜しまず、ですね。

河野:調べものはおもしろくて苦になりませんね。調べが足りないと校正のときにかならずチェックが入りますし。先に補足なり、訳注を入れるなりしないと、後で苦労することになりますから。

岡田:調べるという部分がご自分の強みだとも思われますか?

河野:そうですね。きちんと調べて、わかりやすい日本語にしていくことが大切だと思っています。表現をやさしくする工夫も意識しています。最初、英文に書いてあるときにはなんだか呪文みたいで何が書かれているのかわからなくても、ちゃんと調べて、ちゃんと読める日本語になるので、まぁそのあたりが評価されているんでしょうか。調べていたらそっちがおもしろくて、全然進まなかったりしますけど(笑)。

岡田:調べるのがお好きということは、やっぱり好奇心が旺盛なんですね。

河野:いちばん最近のアフガン侵攻なんかはソ連の軍隊の兵器とか、軍事オタクでなければ知らないこともいっぱいでてきましたが、そういう未知の世界を調べるのはおもしろかったですね。知識欲が満たされます。

岡田:一般的なニュースレベルから踏み込んで行くというのは、たしかに未知の領域に入りこむ感覚でしょうね。翻訳を終えた後はいかがですか? 世界観が変わったとか。

河野:それはもう、やっぱり日頃からニュースや新聞を気にして見るようになりました。背景がわかるので、頭にもよく入ってきます。

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