アメリア会員インタビュー


念願のミステリー作品を初めて翻訳とにかく、翻訳で人を感動させたい!

濱野 :2007年、『ジブラルタルの女王』でミステリー作品デビューですね。どのような経緯で翻訳を担当することになったのですか?

喜須海 :その頃、田口先生のゼミで原書発掘プロジェクトみたいな企画があって、おもしろそうな本を受講生が探してきては二見書房の編集者さんにお知らせしていたんです。それで『ジブラルタルの女王』を私が提案したら、これはおもしろそうだという話になって、リーディングを経て翻訳も担当させてもらえることになりました。

ミステリー作品デビューとなった『ジブラルタルの女王』スペイン語の原書(左)と英語版(右)

濱野 :おお、原書発掘からご自身でというのはすごいですね。念願のミステリー作品の翻訳、いかがでしたか?

喜須海 :それはもう、「私でいいの?」という感じですよ(笑)。すごく長くて、さらに元々はスペイン語の本ということもあって不安で。基本は英語版からの重訳でしたが、念のためスペイン語版も参照して……スペイン語は独学だったので大変でした。でも、とにかく質の高い作品でしたし、念願のミステリー作品だったので、それはうれしかったですね。

濱野 :それ以来、毎年コンスタントに訳書を出されていますね。

喜須海 :ミステリー作品はもう1作だけですが、ロマンスのほうはある程度の頻度で出るようになりました。ただ、ミステリーもロマンスも、エンタテインメント作品であることに変わりはありません。ロマンスでも、ヒストリカルやアクションが多めのもの、ミステリーっぽい要素があるものなどは、特に翻訳していて楽しいですね。

濱野 :他に出版翻訳だからこその楽しみや、励みになるようなことは何かありますか?

喜須海 :そうですねえ……ロマンスのファンはすごく熱心で、ブログなどで感想をアップする方も多くいらっしゃるんですよ。読者からのいい反応を読んだりすると、やはりうれしいものです。あと、実は以前、『石が流す血』を出したとき、ファンレターをいただいたことがあって。「作品も訳もよかったから、今後もこの作家の作品をこの訳者の訳で読みたい」みたいな内容だったのですが、涙が出るほどうれしかった。最初で最後だと思いますけれど(笑)。

濱野 :それはすごい! 励みになりますね。やっぱり、人に感動を与えて、喜ばせることができるというのは本のすごいところですよね。

喜須海 :そうですね。私、本はもちろんですけれど、映画やライブ、ミュージカルとか、とにかく人を楽しませるエンタテインメントが好きなんです。楽しませたり、泣かせたり、笑わせたり……エンタテインメントってすごいなと思うんですよ。私は、何もないゼロから小説を書くことはできないし、歌や踊りもできないけれど、翻訳であれば人を感動させることができるかもしれない―そう考えると、出版翻訳って素敵な仕事だなと思います。

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