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翻訳者として、次のステップへ 翻訳者ネットワーク アメリア
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坂田:その後、特許翻訳者としての仕事は増やせましたか? 中村:この分野は、特許業界での経験とか大学での専攻を非常に重視する傾向があるということを痛切に感じました。つまり、他からの参入がなかなか難しいのです。私にはそうしたバックグラウンドが乏しいですから、最初はまったく相手にしてもらえませんでした。そこで、少しでも足がかりになればという動機でJTFの「ほんやく検定」を受けました。情報処理と特許の2科目を受けて両方で1級に合格し、このあたりから潮目が変わり始めました。こちらからトライアルを申し込むのではなく、先方から声をかけてもらえるケースが出てきたのです。その結果、現在は特許関連の取引先が4社に増え、特許が仕事全体の6割程度を占めるくらいになりました。 坂田:特許翻訳者として独立したときに、ご自身のHPも開設されたそうですね。 中村:はい。当初は自分自身のモチベーションの維持と、潜在顧客へのアピールの意味で立ち上げたのですが、どうやら読者の大半は同業者、つまり翻訳者であることがわかってきました。おそらく今後は、他分野から特許に参入したい翻訳者のための情報サイトへとシフトしていくような気がしています。特許は確かに参入障壁の高い翻訳分野ですが、決して参入不可能というわけでもないし、特許の翻訳が他の分野と比べて取り立てて難しいわけでもないと感じています。私は高校しか出ておらず、特許事務所での勤務経験もなく、35歳を過ぎてから特許の翻訳を始めましたが、それでも参入は可能であるということを、HPを通じて伝えていきたいと考えています。 坂田:HPに“自称「翻訳業界のキムタク」”とありますが。 中村:はい、キムタクといってもSMAPのほうではなく、元読売巨人軍の故木村拓也コーチです。ドラフト外での入団ながら、キャッチャー以外のすべてのポジションを守れる万能選手として活躍し、アテネオリンピックにも出場しました。秀でた才能がなくても、空いているポジションを見つけて入り込み、成功した木村さんは、私にとってよいロールモデルだと思ったのです。このフレーズを使ったおかげかどうかわかりませんが、業界の会合などに顔を出すと、初めてお会いする方に「HP見ています」と言われることがあります。それなりの効果を発揮してくれているようです。 坂田:では最後に、今後の目標を教えていただけますか。 中村:目標はたくさんありますが、まずは特許翻訳者として駆け出しを卒業するため、累積100万ワードを受注することです。この数字に特に根拠はないのですが、これくらい訳したらとりあえずひとつの実績と言えるのではないかと。4年目の現在、ようやく半数を超えたところです。遅々とした進歩ですが、これは絶対にクリアすべき目標です。もう少し中長期的な目標は、翻訳で日本サッカー界に貢献すること。私は翻訳者でありながら、日本サッカー協会の公認指導者ライセンスを持っているほどのサッカー好きですので。その他に、絵本の翻訳にも興味を持っています。2歳の子供を寝かしつけるときに毎晩絵本を読むのですが、あんなに短い文章の中にメッセージを凝縮して伝えようとしているところが面白いのです。 今は特許を最も重視していますが、だからといって日本一の特許翻訳者になろうとは考えていません。競争相手が多すぎますし、1つのことだけに特化するのは、これまでのキャリアの流れにも反します。私は、翻訳者として何の取り柄もなかったので、できるだけ相手の意向に沿った翻訳を提供することと、多様なスキルでクライアントを側面からも支援することによって生き残ってきました。将来像はまだぼんやりしていますが、これらの強みに、9年目に入った翻訳指導の経験を融合させて、翻訳者としてまだ誰も踏み込んでいない新しいフィールドを開拓するのが究極的な目標です。誰もいない領域なら、いきなり第一人者ですからね(笑)。