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濱野 :もともとSEをなさっていたということもあり、IT・技術系の知識はお持ちだったと思いますが、経済・金融系の知識や翻訳スキルはどのように身に着けたのですか?
村地 :以前から好きで勉強はしていましたが、当時、経済・金融翻訳のプロとしてやっていく用意はまだできていませんでした。マクロ経済や財務関係にはかなり詳しかったのですが、例えばローンやファンドの実務、それに法務、契約書関連など、実案件で必要になる重要な分野の知識がかなり欠落していました。IT系の翻訳で食べられるようになったあと、まずフェロー・アカデミーの通信講座マスターコース「経済・金融」を受講しました。ほかにも、市販の本などを読んで独学で勉強しました。
濱野 :独学ではどんな学習法が有効でしたか? おそらく、読者の皆さんもそこがいちばん知りたいところだと思います(笑)。
村地 :経済・金融関係の解説書を読んだり、資産運用会社や証券会社、シンクタンクなどが発行する資料を読み込んだりしました。とくに大企業や外資系のウェブサイトには、英語版と日本語版の両方が掲載されていることも多いので、非常に勉強になります。解説書の類はかなりの数を読みましたが、何と言っても実案件に近いレベルの文書を対訳で学習するのが王道だと思います。あと、グローバリゼーションのもたらす諸問題やオルタナティブな経済の研究などに取り組むNPOの講座に出席したりしていたことも、いまの経済の現実を見る眼をやしなう上で役立ったと思います。
濱野 :NPOの講座まで……すごい。IT系で仕事をしながら、通信講座や独学で経済・金融のプロとして通用する翻訳スキルと知識をつける。脱帽です! ほかに何か、おすすめの学習方法などがあれば披露していただけますか?
村地 :趣味と実益を兼ねているんですが、毎朝1時間ほど、日本経済新聞と海外の主要経済紙のウェブサイトには目を通すようにしています。マーケットレポートなどを短時間で訳すには、日ごろから経済情勢を追いかけて自分なりの大局観をやしなうとともに、その時々のキーワードになじんでおく必要があります。日経新聞については、毎日、隅から隅までほとんどの記事を読みます。経済情勢を把握する目的だけならそこまで全部読まなくてもいいんですが、実はメインの経済関連記事のほか、なかほどの紙面に載っているコラムやエッセイなどを読むのも好きなんですよ。企業人や作家、批評家など、各界で活躍している人のさまざまな考え方や生き方に触れることは大きな活力源になります。また、新聞を読むと新しい語彙や表現にも出会いますから、翻訳者にとって利点は非常に大きいと思います。
濱野 :毎日1時間、必ず新聞を読むというのは、簡単そうでなかなか大変なことですよね。ぼくも実践したくなりましたが、できるかどうか……。