アメリア会員インタビュー

JICAでの国際ボランティアを経て メーカーを中心に通算20年以上の勤務

濱野 :フリーランスになる前は、メーカー内で翻訳業務に携わっていたということですが、もともと翻訳の仕事を目指していたのですか? それとも、偶然、勤めた会社での業務が翻訳だったとか?

長本 :私の場合、高校のあとにいったん印刷会社に就職しました。原稿作成の仕事で和訳の文に触れたことが翻訳に携わりたいと思ったきっかけです。その後、英語の専門学校に行って、英文マニュアル制作の仕事に就き、やがて大学に入り、通いながらマニュアルなどを翻訳する仕事に就きました。そのうち、若いうちにどうしても海外で生活してみたい、特に先進諸国とは異なる価値観を持つ国で……という気持ちが強くなり、大学卒業後は国際協力機構(JICA)の青年ボランティアに応募して、3年間ブラジルで日本語講師として活動しました。

濱野 :おぉ〜、ブラジルで3年間のボランティアですか? それは貴重な経験ですね。帰国後も、翻訳のお仕事を?

長本 :そうですね。いくつかの企業で通算20年以上勤めましたが、ほぼすべてで英語や翻訳に関わる仕事をしていました。

濱野 :たとえば、どのような企業でどのようなお仕事を?

長本 :日本の企業がほとんどで、開発、品質管理、技術サポート部門が多かったですね。たとえば技術サポート部門で言えば、製品についての問い合わせ、故障やトラブル対応などに関する翻訳業務がメインになります。

濱野 :それは、何語を何語に訳す仕事なのでしょうか?

長本 :英語の問い合わせを日本語に訳したり、技術者の日本語の回答を英語に訳したり、和訳・英訳の両方です。ただ、私が勤めていたのは主に日本企業なので、英訳の割合が多くなります。新製品のリリースに関連して、海外販売会社向けにさまざまな情報を英語に翻訳する必要が生じます。さらにリリース後、製品に変更点が出ると、マニュアルや仕様書などを改訂したり、そういった資料の更新情報をレポートの形で発行したりすることになりますので。

濱野 :なるほど。日本のメーカーの場合、必然的に海外に発信する情報を英訳するのが主になるということですね。現在もマニュアルや仕様書などの翻訳に携わっていらっしゃるというお話でしたが、実際にメーカー企業内で翻訳をするのと、フリーランス翻訳者として翻訳するのとでは何か違いがありますか?

長本 :なんと言っても、翻訳する際の背景情報の量が大きく異なります。メーカー社内で翻訳する場合、その内容に関して、原稿の文字以外にさまざまな情報を集めることができます。製品を実際に見ることも操作することもできるし、製品マニュアルや仕様書や設計図面、その他の資料もあるし、関係者に質問もできる。でも、フリーランスで翻訳会社や制作会社を介した仕事では、なかなかそうはいきません。特に新製品の場合、ネットにも情報がないことがほとんどですから、関連情報を調べてあたりをつけて、文字ベースで想像して、それが適切であるかさらに調べて訳すしかありません。そこが、最大の違いでしょうか。

関連する会員インタビュー
実務翻訳