坂田:ご主人の転勤で兵庫県姫路市に移り住んで4年あまり。3年前から翻訳者を目指しはじめ、昨年末から少しずつお仕事を始められたという島崎佳子さんが今回のゲストです。初めて暮らす土地で、どのように学習を進め、仕事を得るに至ったのか、じっくりお話を伺いたいと思います。島崎さん、よろしくおねがいします。
島崎:こちらこそ、よろしくお願いします。
坂田:翻訳を目指すようになったのは3年あまり前ということですが、まずそれまでの経歴を教えていただけますか?
島崎:生まれは秋田です。大学は東京で、経営学を専攻しました。卒業後は故郷に戻り、損害保険会社に入社しました。そこに7年間勤めましたが、仕事では英語はまったく関係ありませんでしたし、学生時代に留学経験などもありませんでした。結婚と同時に会社を辞め、主人の転勤でここ姫路に引っ越してきました。丸4年が過ぎ、今年で5年目です。
坂田:それまでまったく縁のなかった翻訳を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
島崎:結婚と同時に専業主婦になりましたが、私の性格からいって“これは飽きそうだな”と思ったんです。主人の仕事は今後も転勤があります。なので、まだ子どもがいない今、何か手に職をつけたいなと思い、何ができるかな、と考えました。どちらかというと、一発逆転、短期集中型の私なのですが、唯一コツコツ続けていたのが、英語の学習だったんです。中学生のころに聞き始めたNHKラジオやテレビで英会話のプログラムを、ずっと聞き続けていました。
坂田:私も聞いていた時期はありましたが、ずっと続けるというのは、なかなか難しいですよね。英語が好きだったんですね。
島崎:最初は好きで始めて、続けていくうちに、やめるのが悔しいというか、だんだん意地になって続けていましたね(笑)。英語の力って、なだらかな曲線を描いてアップしていくというよりは、階段状にアップしていく気がするんです。しばらく進歩が感じられない時期が続いて、あるときふと進歩を感じる瞬間があるというか。例えば、勉強を続けていたら、海外旅行でうまく会話ができたとか、何かの拍子に英語が聞き取れたとか。そういう体験があったから、やめずに続けられたのかもしれません。
坂田:それで英語に関連した仕事をしたいと思ったわけですね。
島崎:はい、そうです。最初にやってみたのは、小学生に英語を教える仕事でした。実は独身時代に英会話学校に通っていたとき、ちょうど小学校高学年の英語教育が始まったころで、勧められて「小学校英語指導者資格」を取っていたのです。それを生かそうと、塾で小学生に英語を教え始めました。でも、英語を使った仕事とはいえ、重要なのは英語力よりも子どもにどう接するかという部分で、私が目指していたものとは違うなと感じました。では次に何をしようかと、英語関係の雑誌を眺めて探しているときに、翻訳という仕事があることに気付いたんです。翻訳にも、出版や実務などさまざまな内容のものがあることも、このころ意識しました。
坂田:それで翻訳を学んでみようと思ったのですね。難しそうだとか、できるかなとか、そのような不安はありませんでしたか?
島崎:例えるなら、試験を受けるときに緊張するのは、しっかり試験勉強をしてきた人で、まったく勉強してこなかったがゆえに、その試験の難易度もわからず平気で受けられた、そんな感じでしょうか。それまで私は翻訳をまったくしたことがなかったので、どのくらい大変かわからなかった、だからこそ飛び込めたんだと思います。とにかく、まず学校に行ってみようと思い、自分なりに調べて翻訳の講座がある大阪の語学学校に通い始めました。
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